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「奴らを高く吊るせ!」 1968

奴らを高く吊るせ! [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

 リンチに遭うも九死に一生を得た男は、保安官となって復讐を果たそうとする。

 

感想

 冒頭は牛を追うのどかな開拓時代の光景から一転しての、突然の集団暴行シーン。そして絶体絶命というか、もう無理、という状態でタイトルバックとなる。この劇的な流れは見事だ。

 

 しかし誤解があったとはいえ、寄ってたかって一気に殺してしまおうという相手側の姿勢が恐ろしい。それだけ当時は治安が悪く、自分のことは自分で守らないと、という意識が強かったのだろう。広大な土地にわずか数の保安官では当然かもしれない。

 

 

 ただ彼らの中に、沸き上がった怒りの感情を静めるためには、真実はたいして重要ではなく、それらしさがあれば何でもいい、という雰囲気があったのは見逃せない。これが私刑の問題点とも言えるだろう。感情が優先され、第三者の手に委ねた時のような公正さを保てない。

 

 一方の第三者として事件を裁く判事。確かに公正さや厳正さは担保できるが、あまりにも型通りな運用だと、時として柔軟性を欠いてしまう。保安官となった主人公は、そこにやるせない思いを抱き、何度か判事と衝突する。

 

 確かに情状酌量なしで次々と死刑にする判事と絞首刑をお祭り気分で眺める大衆は、リンチとそんなに変わらない光景に見えなくもない。それにしても、そんなやるせない状況に耐えられなくなった主人公が取った行動が、女を抱く、だったのは男らしいというか、人間味が溢れていてちょっと笑ってしまった。

 

 復讐を果たしたいが、保安官として法的手続きを経た上で罰したいと考えている主人公。ただ、彼のリンチに加わった集団の中には消極的だった者もいて、それを一律に罰しようとする事にスッキリしないものを感じている。法には従いたいが、時としてそれは自分の感情を納得させることが出来ないというジレンマが伝わってくる。

 

 クライマックスは、捕まることを恐れて立て籠もった一味との対決。そのリーダーとの決着のつき方は、これまでの流れを汲んだいいオチだった。最初とクライマックスに見ごたえのあるシーンが用意されている上手い構成。ただ全体としては、痛快なアクション映画というよりも、どこか道徳的な真面目さが感じられる物語ではあった。

 

スタッフ/キャスト

監督 テッド・ポスト

 

出演

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インガー・スティーヴンス/エド・ベグリー/パット・ヒングル/ベン・ジョンソン/チャールズ・マッグロー/ブルース・ダーン/デニス・ホッパー/L・Q・ジョーンズ/アラン・ヘイル・Jr

 

奴らを高く吊るせ! [DVD]

奴らを高く吊るせ! [DVD]

  • 発売日: 2011/06/22
  • メディア: DVD
 

奴らを高く吊るせ! - Wikipedia

 

 

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