★★★☆☆
あらすじ
故郷に久しぶりに帰って来た元軍人の男は、新しく出来たカジノによって町が荒廃し、権力を握ったオーナーにより牛耳られていることに憤る。
1973年の映画「ウォーキング・トール」のリメイク。原題は「Walking Tall」。80分。
感想
地元に出来たカジノに憤る元軍人の男が主人公だ。まずは訪れたカジノで不正に気付き、暴れる。大勢の警備員に取り押さえられて半殺しの目に遭ってしまうがなんとか復活し、今度はオーナーがドラッグを広めていることに怒り、暴れる。義憤にかられるのは分かるが、あまりにも直情的すぎて笑ってしまった。もっと他にやりようはあったはずだ。
その結果主人公は逮捕されてしまう。カジノオーナーに行政も司法も牛耳られている状況下では不利だったが、住人たちの支持を得てなんとか無罪を勝ち取れた。この判決は、法に則るなら腑に落ちないのだが、これが裁判員制度の良いところなのだろう。法では量れない機微を汲むことができる。もちろんそれがデメリットになることもあるわけだが。
そして主人公は保安官となり、反撃に出る。だがやってることは、友人を相棒に採用したり、容疑者の車を嫌がらせで破壊したりとなかなか酷い。やってるのがあのザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)だから観客は不安なく見ていられるが、普通だったら腐敗や汚職、権力濫用を心配してしまう状況だ。それに言及してジョークにもしていたが、あまり笑えない。
序盤に主人公がすぐに暴れていたのもそうだが、全般的にこの映画では内容に比べて登場人物らのノリが軽いきらいがある。主人公の相棒となった友人もそうで、特別強いわけでもないのに敵に襲われるとコミカルな雰囲気で対処する。だが全く余裕のない状態の時に相手が殺しに来ているわけなので、全然笑ってる場合ではない。死んでも全然おかしくないシチュエーションだ。笑えない状況で笑わそうとしてくる演出はちょっとどうかしている。
主人公の反撃に敵は当然黙っていない。部下に命じて保安官事務所を襲撃させる。しかしアメリカ映画ではよく見る光景だが、平気で警察や保安官といった公権力に攻撃を仕掛けるあっちの悪党たちはいったい何なのだと思ってしまう。独立心に富む国民性なのか、銃社会の弊害なのか。日本だとヤクザだって警察と全面的に戦うことはしない。
ラストは敵との直接対決だ。それなりのカタルシスは得られるのだが、ストーリー展開に緩急がなく、呆気なさがあった。もう少しタメを作って気分を盛り上げる時間を確保して欲しかった。事務所を襲撃されたその足ですぐに敵の本拠地に乗り込むのは、物語として性急すぎる。起承転結をじっくり描くよりも、サクッと見られる上映時間の短さを優先したのかもしれないが。
ルールはあくまでも物事を円滑に進めるための原則でしかなくて、それに固執して何が何でも守らなければいけないものと考えてしまうのは間違っているのかもなと感じてしまう映画だ。ルールなのだからとにかく守れと思考停止するのではなく、本質を見失わない柔軟さをもっていたいものだ。
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スタッフ/キャスト
監督 ケヴィン・ブレイ
出演 ザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)/ジョニー・ノックスビル/ニール・マクドノー/クリステン・ウィルソン/アシュレイ・スコット/ジョン・ビーズリー/マイケル・ボーウェン/ケヴィン・デュランド
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