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「よこがお」 2019

よこがお

★★★★☆

 

あらすじ

  訪問看護師として働く女は、公私ともに充実した日々を過ごしていたが、自分の甥が訪問先の娘を連れ去る事件を起こしたことからすべてが狂い始める。

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感想

 訪問介護の仕事を献身的にこなし、訪問先の家族とも良好な関係を築いていた中年の女が主人公だ。プライベートでも結婚が決まって順風満帆だったが、訪問先の女子中学生にたまたま引き合わせてしまった自分の甥が事件を起こしたことからすべてが崩壊してしまう。事件が起きるまで、事件直後、数年後の現在と、3つの時間が並行して描かれていく。

 

 主人公の人生が狂ってしまったのが、彼女に何の責任もない偶然の産物と甥の犯罪だというのが切ない。それなのに社会正義の名のもとに世間の好奇の目が襲い掛かる。ターニング・ポイントとなったのは、主人公の甥が事件に関与していることが分かった時に、すぐに訪問先の家族に打ち明けなかった事だろう。

 

 

 だがそもそも主人公に責任はないわけだし、言わずに済むなら言いたくないことだ。そこで他人に制されて、黙ってしまった気持ちはよく理解できる。だがこのタイミングを逃してしまうと、もう言い出せなくなる。とはいえ、ここで打ち明けたところで大してその後の展開は変わらなかったような気もするが。

 

 やがて主人公は、たった一人の女性によって追い詰められていく。それを示すような、夜の公園で彼女の顔に深く暗い影を落とすシーンはとても印象的だった。だがそれと同時に、あまりにも分かりやす過ぎる演出に、ちょっと笑ってしまいそうになってしまった。

 

 しかしてっきりマスコミ、同僚、近所の人など、いわゆる世間に無実の主人公が袋叩きにあう様子を批判的に描くかと思っていたので、ひとりを悪者にするのは意外だった。世間が叩くこと自体は自然な成り行きで、仕方ないことのようにされている。だが皆の悪気のない悪意を代表して、彼女がすべてを背負ったと見ることも出来るかもしれない。

 

 中盤までの現在の主人公の行動は、何をするつもりなのか、その意図が読めなかったが、やがてそれは復讐のためだったことが明らかになる。だがこの復讐はよく考えるとなかなか難易度が高い。なんと言っても年齢差があるので相手をその気にさせるのが難しそうだし、主人公の接近の仕方も怪しさ満開だった。

 

 これは演じたのが筒井真理子だったからリアリティがあったと言えるかもしれない。そして難易度が高かったからこそインパクトがあった。これがもし若い女であれば特に心に響かなかったはずだ。

 

 先が読めない展開で、純粋に物語の行方を追うことを楽しめた。善良でしっかりとした女性のような主人公にだって、普段は人に見せない顔がある。お釈迦様ではないのだからそんなの当然だ。それは彼女に限らず誰にだってある。甥にも主人公を陥れた女性にもそれはあった。だから勝手に相手を決めつけて油断しないことだ。いつそれが顔を出すか分からない。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 深田晃司

 

出演 筒井真理子/市川実日子/池松壮亮/須藤蓮/小川未祐/吹越満

 

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  • 筒井真理子
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