★★★★☆
あらすじ
長年連れ添ったゲイの男性二人は同性婚をするが、それを機に失業して住むところがなくなってしまい、しばらく別れて親類の家などに居候することになる。
ジョン・リスゴー、アルフレッド・モリーナ、マリサ・トメイら出演。95分。
感想
結婚した途端に失業し、住む家を失ってしまった熟年ゲイカップルの物語だ。せっかく結婚したのに離れ離れで暮らすことになるなんて悲し過ぎる。働いていたカトリックの学校も、同性婚をしたら解雇される可能性があることくらい事前に教えてあげればいいのにと思ってしまった。神も仏もない。
ちなみに長い間一緒に暮らしてきた二人がなぜ今結婚するのかというと、同性婚が合法化されたからということらしい。すでに高齢なので引退してから結婚する手もあったのかもしれないが、この二人はそれでも早く正式に結婚をしたかったのかもしれない。
家を売却し、親類の家などでしばらく離れ離れで暮らすことになった二人は、居候先でそれぞれ肩身の狭い思いをしている。そんな中、日中は家で仕事をしている物書きの甥の妻に何かと話しかけて邪魔をし、ウザがられてしまうシーンは可笑しかった。だが彼としては、居候なのだから愛想よくしなければならないと、気を使って話しかけていた部分もあったはずだ。
よく猫がキーボードに座ってPC作業の邪魔をするおもしろ動画があるが、あれと同じだ。無言で一点を見つめてじっとしているから暇なのかな?相手をしてあげないと、と思ってしまう。割と人間も同じようなことをやっていて、猫のことを笑えない。
つらい状況にいる二人だが、悲観的になることなく、それを受け入れて現実的に対処しようとしていることに感心してしまう。これは人生経験を積んで、なるようにしかならないし、なんとかなると思えるようになった年の功だろうか。あるいは二人が芸術家であることが影響しているのかもしれない。人生のブライトサイドに常に目を向けようとしている。
そして苦しい中でも二人が仲睦まじいことにほっこりする。老後が不安になってしまう物語ではあるが、愛があれば大丈夫なのかもと楽観的な気分にさせてくれる。だがそれは、老後までにそんな関係を築けるかがカギになってくる。つまりはそれまでにどんな生き方をしてきたのかが問われることになるのだろう。日々を大切に生きるしかない。
何かのフラグかと思うくらい、二人の束の間の幸せな時間が描かれた後、その予感が的中する後日談となる流れは見事だ。しかもこれ見よがしに泣かせる展開ではなく、あっさりとしていたのが良い。きっとそんなに悪い人生ではなかったと満ち足りた最後だったのだろうなと思えるし、二人の想いは親類の子供に受け継がれた。
温かな余韻に静かに浸れる物語だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 アイラ・サックス
脚本 マウリシオ・ザカリーアス
出演 ジョン・リスゴー/アルフレッド・モリーナ/マリサ・トメイ/チャーリー・ターハン /シャイアン・ジャクソン/マニー・ペレス/ジョン・カラム