★★★☆☆
あらすじ
数々の仕事を請け負ってきた殺し屋の男だったが、逮捕され、警察の潜入捜査に協力することになる。
北野武監督主演、浅野忠信、大森南朋ら出演。62分。
感想
殺し屋から潜入捜査官になった男の物語だ。前半はシリアス、後半はそのパロディの二部構成になっている。
前半は北野映画でよく見かける淡々とした殺し屋の仕事ぶりがいつも通りに描かれる。逮捕されて潜入捜査に協力するようになってからも、北野映画のイメージ通りのバイオレンスドラマが展開される。ここは後半のための前振りでもあるので、なるべく典型的なものにしているのだろう。
ただそれでも、仕事の依頼を受け取る喫茶店で、いつもは頼まなかったコーヒーを注文した途端に逮捕されてしまったり、潜入先からさりげなく離脱するラストの締め方とか、上手い演出に唸らされる。
後半は前半のストーリーをなぞったパロディが行なわれる。シリアスだったシーンが、馬鹿馬鹿しいベタなギャグを連発するコメディに置き換えられていく。くだらなさに思わず笑ってしまうタイプの笑いだが、そこそこの面白さといったところだろうか。分かりやすい笑いではあるので、海外の方がウケたりするのかもしれない。アドリブでやり合っているシーンは面白かった。
一つ気になったのは、シリアスな第一部で刑事に尋問されている時、主人公が何度も手錠を気にするような仕草をしていたシーンで、これは絶対第二部でギャグになるのだろうなと思っていたのに、何もなかったことだ。あれはシンプルに主人公のヤバさを表現する演出だったということなのか。確かに印象的なシーンではあった。
時々監督はこういうタイプのコメディ映画を作るが、デトックス的な意味合いもあるのかもしれない。我慢していたおやじギャグをここで一旦吐き出しておこうみたいな感覚だろうか。ヒリヒリするようなシリアスな物語は、少しの変化でとびきりのコメディになったりする。思いついたギャグを封印してばかりいると精神衛生上良くないのだろう。
最初から配信を意識して作ったということで、少し間が短かったりといつもと違うように感じる部分もあった。どうでもいいが、使っているノートパソコンが分厚くて、古すぎたのは気になった。
一時間強のコンパクトの作品なので、手軽に見られるのはいい。まさに配信向きの映画といえる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/出演*/編集 北野武
*ビートたけし名義
出演
大森南朋/白竜/中村獅童/仁科貴/宇野祥平/馬場園梓/長谷川雅紀/鈴木もぐら/劇団ひとり
音楽 清塚信也