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「四畳半襖の裏張り しのび肌」 1974

四畳半襖の裏張り しのび肌 [DVD]

★★★☆☆

 

あらすじ

 ライバルの芸者に男を取られた女は、二人の間に生まれた子供を連れ去って育てる。

 

感想

 初期の白黒映画のような粗い映像で映画は始まる。これがずっと続くと辛かったかもしれないが、一気に関東大震災の頃の大正時代に連れていかれて、すんなりと物語に入っていけた。タイトルバックからはカラーになるが、このセピアがかった映像もまた雰囲気があって良かった。

 

 前作は色事に関するあれこれをしっとりと描いていたような記憶があるが、今回は色街で育った少年のモンスターぶりがじっとりと描かれていく。ただでさえその手のことには自然と詳しくなってしまう環境に育ったエリートなのに、なおかつ怪物的なのだから、この先どう成長していくのかと空恐ろしさがあった。ナチュラルに当然のように周りの人間に手を出していく。

 

 

 この少年の怖いところは女性だけでなく、男にも手を出してしまうところだ。ストーリー的には別にありなのだが、この手の映画的にはありだったのだろうかと余計な心配をしてしまった。男同士のシーンも結構じっくり時間をかけて描いており、当時の観客はそれをどんな気持ちで見ていたのかが気になった。そんなものを見に来たわけじゃないと怒っていたのか、さすが神代監督!と思ったのか。

 

 前回同様、出征する兵士や戦争映画など、戦争の影を感じさせるシーンが時々挿入される。男たちが勇ましくヒロイックに戦う裏では、男女のそういう物語が同時に繰り広げられているわけだ。それが戦時の「産めよ増やせよ」の方針に上手く合致してしまうのは、良く出来ているのか、皮肉なのか。

 

 凄みを増していく少年が最後に手を出す相手がまたすごい。だからそんな前振りがあったのかと感心してしまうような上手いオチだった。

 

スタッフ/キャスト

監督 神代辰巳

 

脚本 中島丈博

 

原作 「此の小さな悪魔」  「「高」資料」所収

 

出演 宮下順子/丘奈保美/芹明香/中澤洋/花上晃/高橋明/木島一郎/吉野あい/小森道子/影山英俊/吉田朗人/安藤繁子/江角英明/絵沢萠子 

 

撮影 姫田真佐久

 

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