内容
アカデミー作品賞。
感想
刑務所での強制労働を逃れるために、ジャック・ニコルソン演じる男が精神異常のふりをして精神病院に入所するところから物語が始まるのだが、そこに入院する患者達の最初のビジュアルが強烈。本物?と疑いたくなるレベル。顔の表情から仕草まで。もう見るからに。おかげで患者役の一人がダニー・デヴィートだということに気づいたのはだいぶ後だった。そしてなぜか少し安心した。
本作ではなんといってもジャック・ニコルソンが魅力的。犯罪者だということだが患者たちとも対等に接するし、思いやりがあってフランクで何ともいい奴。管理を嫌って自由を愛する人柄が良くわかる。そして、その雰囲気が他の患者によい影響を与え始める。
最終的にジャック・ニコルソンは院内での規律を乱す問題児としてロボトミー手術を受け、それまでの彼とはかけ離れた人間になってしまうのだが、疑問に思うのが彼は元々、精神を病んでいたのかということだ。
気になるのは院長との会話シーンで、自分は「精神を病んでなんかいない、院長が望むならそう振舞うことも可能だが。」というようなことを言っていて、強制労働を逃れるためならそんな事言わないだろうし、だけど逆に自分は病んでいないなんて訴える人間は、大抵病んでると捉えることも出来るし。
ただ、あの場所であの入院患者が着ているような簡易な服を着ていたら誰でも病んでるように見えてしまう。きっとあの徹底的に管理しようとする婦長のルイーズ・フレッチャーだって、同じ立場なら病んでるように見えなくもない。そう考えるとなんだか怖い。
大体ノーマルな状態というのは何なのだろう。よく殺人事件などで精神鑑定が行われるが、錯乱して殺人する人間と平常心で殺人する人間では、どっちが病んでるのだ?という話だ。捉え方一つで精神病と診断され、ロボトミー手術とかされたらたまらない。
ラストでネイティブ・インディアンのチーフがジャック・ニコルソンに話しかけ、奇跡を起こすところは感動的。ただそんなことしなくてもこのチーフは自分の意思で自由に退院できる立場ではなかったのだっけ?とも思ったが。でも、いい作品だ。
スタッフ/キャスト
監督 ミロス・フォアマン
原作 カッコーの巣の上で (白水Uブックス192/海外小説 永遠の本棚)
製作 ソウル・ゼインツ/マイケル・ダグラス
出演
ルイーズ・フレッチャー/マイケル・ベリーマン/ウィリアム・レッドフィールド/ブラッド・ドゥーリフ/クリストファー・ロイド/ディーン・R・ブルックス/ヴィンセント・スキャヴェリ/スキャットマン・クローザース/シドニー・ラシック/ダニー・デヴィート/ウィル・サンプソン
撮影 ハスケル・ウェクスラー
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