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「ベロニカは死ぬことにした」 1998

ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)

★★★☆☆

 

 自殺を図るが失敗して、精神病院に運び込まれた女性。心臓に残った後遺症で余命一週間と告げられる。

 

 余命一週間とは、なかなか困る微妙な期間だ。いくら死にたいと思っていてもすぐに死ねるわけではないのでどうしても色々と考えてしまうし、だからといってどうせ死ぬのにわざわざ自殺を図ることもないか、と思ってしまうような期間。

 

 逆に残された時間を有意義に使おうと思っても、何も出来ないわけではないが、だからといって何でも出来るわけじゃない。これまた何をするべきか、考え込みたくなるような中途半端な時間。

 

 主人公は先が見えてしまったような人生に生きる意味を見出だせず、自殺を図る。死にたいという強い願望ではなく、もう死んじゃおう、みたいな、それすらも希薄な意思しか感じられないの所に深刻さを感じてしまう。

 

 なんとか自殺を免れ、だけど余命わずかと知った主人公は、精神病院の他の患者たちや関係者との交流により、自らの人生を振り返り、生きることの意味について再び考え始める。彼女が気づいたのは自分の人生に様々な規制を自ら設けて、生き方を限定してしまっていた事。

 

 自分の能力や世間体を考慮して、やることとやらないことを決め、そのルールのもとで暮らしていれば、あまり困った事態に陥ることはなく安心して生きていくことが出来る。だけどそういった生き方は、変わり映えのしない毎日が続き、将来に起きることさえ何となく分かってしまうような生き方で、次第に人生が無意味に思えてくる。そんなふうに自分で壁を作ってその中でおとなしく生きるのではなく、自分の能力や世間体なんか気にしないで、自分がしたいと思ったことをして生きたい、そう彼女は願うようになる。

 

それは、世の中に存在する困難や堕落から、彼女を庇おうとするような愛だった。いつか、彼女がそれに直面し、全く身を守れなくなるという事実を無視して。 

単行本 p225 

 

 こういった自分の中に設ける壁というものは、自分でも気づかないうちに築かれている場合もあるから厄介だ。わが子の事を心配してあれをしちゃいけない、これをしちゃいけないと言う両親だったり、彼らを扱いやすくするためにルールで縛る教師だったり。

 

 精神病院の患者たちは、少なからずこの自分の中に存在する壁に苦しめられ、心を病んでいる。だけど世の多くの人たちもきっとそんなに変わらない。気づかないふりをしたり、逆に強く意識して、何でもないかのように振る舞っているだけだ。そんな壁なんか乗り越えて、自由に世界を歩き回れることこそが、本当の意味での「生きてる」という事なのかもしれない。

 

著者 パウロ・コエーリョ

 

ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)

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ベロニカは死ぬことにした - Wikipedia

 

 

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