★★★★☆
あらすじ
ふとしたことがきっかけで、かつて中学の時に机を並べて共に過ごした女性と再会することになった男。
感想
会話が面白い。読んでいてニコニコしてしまう。主人公は面白い事ばかり言っていて、堅苦しい事は言わないのだが、だけどそこに信念のような強さを感じる。不平不満は口にせず、悪口を言いたくなる時も困ったな、と顔をしかめるだけだ。笑わせることで相手を幸せにし、それで自分も幸せになる、やがてそれが世界に平和をもたらす、みたいな強い信念が感じられて、好感が持てる。
人は大人になると子供のように無邪気に行動できなくなってしまうんだな、と感じてしまう小説でもある。子供の時の今日会えなくても明日は会えるという小さな世界から、いつの間にかそう簡単にまた会えないような大きな世界に足を踏み込んでしまっている。
小さな世界から次第に大きな世界へと歩を進めていることに気付かず、その後に再会することがないかもしれないのに、軽いあいさつで別れてしまう事もある。なんだか切ない。
これまでにそうやって別れてきた人たちはたくさんいるのだろう。今思うとあれが最後だったなとか、その割にあっさりとした別れだったなとか。
当時は何とも思わず過ごしてきたが、今思うとあの頃に始まっていたことなのかな、となんとなく思うことは誰にでもあるはずだ。妙にその頃の事を考えてしまう、そんな小説。
著者