★★★★☆
感想
自分が何かしようと意識した時には、すでに脳は無意識下でそれを知っていて、それに備えて全身に指令を送っているらしい。ということは、何かしようと意識することは、既に無意識下では決まっていたことになる。
自分のコントロール下にあると思っていた「私」は、何に動かされているのだろうか。「私」とは何なんだろうか、「私の意識」とは。と、脳に付いて深く知るにつれ、まるで哲学のような疑問が浮かんでくる。遠い所にいるような脳科学と哲学が、実はかなり近い所にいたことが面白い。
脳の各パーツがそれぞれ一つの機能を担っているわけではなく、似たような機能を持つパーツが複数あり、それが議会のように議論している、というのも、なかなか上手く出来ている。脳のある部分を損傷をしても、ある機能が完全に失われるわけでなく、それまで野党だった機能がそれに取って代わることができる。
今はAIが持て囃されているが、人間と同様にするためには似たようなサブのAIをたくさん作って、それらを競合させて一つの結論を出させるようにする、ということが必要なのかもしれない。サブのAIの組み合わせによって、個性も出てくるだろうし。
その他、人は外界をどのように認識しているのか、失明した場合などはそれがどうなるのか、無意識が「私」を動かしているかもしれないのなら、心神喪失時の犯罪は無罪になる刑法はどうなっていくのか、など、興味深い話が次々と出てくる。
著者のたとえ話が上手く、すんなりと内容が入ってくるので楽しく読み進められた。
著者
デイヴィッド・イーグルマン