★★★★☆
感想
普通じゃない考え方が出て来る思考法が紹介されている。その基本は常識や思い込みを取り払って考えること。まるで子供のように。このような考え方を身につけることで硬直化している問題にも一石を投じることができるし、思わぬ解決法が導き出せるかもしれない。
人は聖書のモーセの十戒をすべて思い出せないが、アダムとイブの話やモーセが海を割る話などの物語については良く覚えていることにならって、各章は物語を交えて進行し、それらの話が興味深い。
科学の世界では当たり前に行われる実験も、ビジネスの世界ではなかなか取り入れられない話。実験を行うのは分からない事があってそれを確認するためだが、ビジネスの世界では「分からない」とはなかなか言い辛く、なので実験を行えない。皆が分かっていないのに、皆わかったような顔をして仕事をしているということだ。
また、食事の延長線上にあるものではなく、別物として「大食い」を捉え、様々な実験を行い、さまざまなテクニックを生み出した大食いチャンピオン小林尊の話。大食いというと大食漢たちの競技、というイメージが覆った。
自転車競技の選手に全速力で自転車を漕いでもらい、その様子を映像に収め、今度はその映像を見せながら、しかし実際には細工した早回しの映像を使って走らせると、選手は早回しの映像と同様に自転車を漕ぎ、自らの全速力と思っていた記録を抜くという。このことからも、自らの限界も脳を騙すことで突破することが出来るという事がわかる。もっといえば、最初から限界を設けなければいいということだ。
子供たちの学力向上の議論になると、すぐに学校制度の改革や教師の問題に目が行きがちで、容易には実行できない大きな話ばかりになってしまいがちだ。だけど、議論の主役である子供たちに注目すると、視力の悪い子供たちにメガネを配るという、すぐに実行できそうな案が出てきたりする。また、学校よりも、子供たちが多くの時間を過ごす家庭について、もっと考える必要があることにも気付くはずだ。
などなど面白い話が次々と出てくる。勿論、このように子供のように考えるということは、実際の子供がそうなように煩わしく思われたり、常識に従って生きている人達から怒られたりすることもある。一応その対処法についても作者は記述しているが、実際の所、周囲のそんな反応を楽しんでいるようにも思える。
反論には必ずと言っていいほど利用価値があるからだ。そこから何かしら学んで、自分の主張を強めるのに使うことができる。
p230
反論されても聞く耳を持つことが大事だ。
最後の章で著者が語ることが「やめること」について、というのも面白い。世の中には、頑張ることが大事、という思想が蔓延り過ぎているきらいがある。下手すれば「結果は出ていないが頑張っているから評価する」という人もいるくらいだ。
だが、頑張ることは正義、みたいな思想がブラック企業を生んでいるわけで。この会社ブラックだな、と思ったらすぐ辞めるように皆がすれば、ブラック企業なんか存続できない。小さく失敗して学び、次に繋げることが重要だ。過労死みたいな取り返しのつかない大きな失敗する前に。
著者
スティーヴン・レヴィット/スティーヴン・ダブナー
- 作者: スティーヴン・レヴィット,スティーヴン・ダブナー,櫻井祐子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/02/14
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登場する作品
人の心を手玉にとる技術 ――現役コロンビア大学院生・メンタリスト・魔術師の門外不出トリック――