★★★★☆
内容
ゼロ秒思考を身につけるためのメモ書きの方法。
感想
物事について頭の中で考えるとき、様々な思考が行ったり来たり堂々巡りを繰り返すばかりで、一向に事が前進しないことがある。そんなありがちな問題を解決するために、著者が提案するのが思いついたことをとにかく書き出していく方法だ。確かに一旦書き出すと、様々なアイデアを忘れてしまわないように頭の中に留めておかないといけないというプレッシャーから開放され、スッキリするような気がする。
ただ書き出すにしても、見やすいようにきれいにまとめておこうとすると、それはそれでストレスになる。これに対しては、まとめようとしないで思いついた順に次々と書けば良いとのこと。書き出したメモは何度も見返すのではなく、見返したくなったら、もう一度同じように新たに書き出す。これを繰り返していると、自然と論理だった、洗練されたメモが書けるようになる。そしてそれは、洗練された「思考」ができるようになっているということでもある。
これまでのこういったメモ術は、情報をどのように蓄積し保管しておくか、ということが主眼だった。それに対し、これは頭の中にあるアイデアや情報を一旦外部に出して整理してから戻し、常に頭の中にノイズがないクリアな状態を保つことを重視している。
だからほとんど取られたメモは顧みられることがない。保管の場所が変わる際に自分の成長を確かめるためにざっと眺めるだけ。メモを取った成果は、自分の頭の中に存在しているという寸法だ。
今の御時世だとどうしてもITを活用したくなるが、この本では一切活用していないのが面白い。まだデジタルは手書きの手軽さを圧倒するほどのレベルに達していない、との理由だ。ゼロ秒思考だけに一秒たりとも無駄な時間を使いたくないという考えがその他でも徹底している。本では触れていないが、大量の顧みられないメモもスキャンしてデータとして保存したくなるが、おそらく同様の理由でそのまま積み上げておくだけだ。そんな数秒を惜しまなくてはいけないかと言いたくなるが、それが積もり積もってまとまった時間になり、何かができるということなのだろう。
万人にとってベストの方法とは思わないが、誰にでもある程度の効果はある方法だと思う。試しにやってみたら、全然漢字が思い出せなくて閉口したが、幾分頭の中はスッキリしたような気がする。
著者
赤羽雄二