★★★☆☆
感想
昔、何気なく立ち寄った滋賀の近江商人の旧邸を見学した時、でかい家だなと思っていたのに、これはほんの一部で当時はもっとでかかったという表示を見て驚いたことがある。しかも、「三方よし」の精神で商売を行っていたというのを知って、近江商人はすごいな、と感心した。その後、司馬遼太郎の「菜の花の沖」で、近江商人が東北、北海道でエゲツない事をしているというのを読んで、あれ?と思ったりしたが。
この本読んでみた感想としては、近江商人はいい商人もいたし、そうでないのもいた、という事。ただ同じ地域からこれだけ商人が出てくると、その地域の人々の心持ちも他とは違ったのだろう。あそこの家のように自分も商売で成功できるかもという気分になる。そして、成功すれば近所の尊敬される金持ちの真似をするようになる。そうやって、地域の文化が形成されていったのだろう。ちなみに「三方よし」という言葉は、当時そういう言葉を使っていたわけではなくて、後に近江商人の経営を説明するために作られた言葉だそう。
複数の商人がテーマ毎に何度も現れるのでちょっと分かりづらかった。明治維新や戦争など激動の時代に商人が生き抜く難しさや、その時々の権力者との付き合い方が家の命運を分かつところなど、商売を存続させるのは生半可なことでは出来ないことだということがよくわかった。今も続く企業もいくつかあるが、消えていった商家はどのような終焉を迎えたのかも知りたかった。
著書
末永國紀