★★★★☆
内容
進化論の観点から見たモテる方法を解説する。原題は「Mate: Become the Man Women Want」。
感想
世にはびこる間違った通説やマインドコントロール的な手法ではなく、進化論的にみたモテる方法が紹介されていく。ちなみにこの本で紹介されているのは男性のモテる方法のみだ。だが女性もこれを読むことで、いい男性の選び方を学べ、また自身の男性観の致命的なバグに気付くことができるかもしれない。
序盤にまず、男性と女性の違いについての説明がある。これが分かっているようで実はわかっていなかった、ということが案外多くて興味深かった。そんな中で、女性を理解するためには、もし自分がゲイで、筋骨隆々のゲイのアメフト選手やバスケ選手が集うバーに行ったらどんな態度・行動を取るか想像してみるとよい、という話は分かりやすかった。
興味がある人がいてもグイグイとはいかず、まずはヤバい人でないか、力ずくで来る人でないか、慎重に見極めようとするだろう。これは理解の助けになりそうな有用な思考実験だと思うが、それをすること自体に拒否反応を示す“男らしい人”は多いかもしれない。だが、そういう状態で常に女性は過ごしているわけだ。
それを学んだ後は、女性にモテるために必要なことが色々と挙げられていく。当然様々な要素があるのだが、そのどれか一つに特化するのではなく、まんべんなく身に付けることが重視される。女性はヤバい男にひっかかると失うものが大きいので、できるだけその兆候がある男は避けようとするからだ。何かが欠けている男は、その可能性が高いとみなされてしまう。
つまりモテる男になるためには、すべてを兼ね備えた男にならなければいけない。結局、パーフェクトな男になる必要があるのかよと、当たり前過ぎる結論にがっかりしてしまったのは否めない。だが何が必要かを知っているだけでも、かなり変わって来るはずだ。少なくともそれに取り組む機会があれば、ポジティブな気持ちで望めそうだ。確かこれもモテる要素の一つだったから、とりあえずやっておこう、みたいな。
たくさん紹介される男女の違いや接し方などを読んでいると、もしかしたらジェンダー教育もここからスタートすればうまく行くのではないか?という気がしてきた。男女平等から入ると、平等なはずなのに男はズルい、いや、女はズルいとなって対立し、果てにはミサンドリーやらミソジニーやらをこじらせる人間が出てきてしまう。だがほとんどの男女は異性のパートナーが欲しいと思っているのだから、まずはモテたいよね、から入れば無駄な対立は防げるかもしれない。
しかし逆説的ではあるが、女性は「好意的な性差別者」(守ってくれる男)を、職場ではなく恋愛的なつながりにおいては、魅力的だと判断する。さらに、「好意的な性差別」に価値があるとする女性は自分の人生への満足度が高い。
つまり、難しいのだ。(後略)
p212
互いの理解を深めた後に、でも男女の関係は恋愛だけじゃないよね、職場や学校などそれ以外の場でどうするべきか考えてみよう、と進めばスムーズだ。そうすれば、恋愛局面じゃない場面でその要素を持ち出すのは駄目だよね、なんて意見も自然と出てくるかもしれない。それぞれが深く考えるようになる。不都合に思えるような真実を知ったとしても、鬼の首を取ったように嘲り、憎悪を募らせることはないだろう。
それから、自分が今、女性にどんな関係を求めているのかをまず自分で理解していないといけない、と述べているが、それが結婚であれ一夜の関係であれ構わない、としているのは好感が持てる。自分がどうしたいのかをまず理解した上で、同じものを求めている女性と関係を持てば誰も傷つかずに済む。彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からずだ。
読めばすぐにモテるようになるとは思わないが、そのスタート地点には立てたと思える本だ。とりあえず女性の視点について十分に知っておくだけでもライバルにかなりの差をつけられるはずだ。あとは必要な能力を徐々に身に付けていけばいい。もっと若いうちに読んでおきたかった。
著者
ジェフリー・ミラー/タッカー・マックス
監訳 橘玲
モテるために必要なことはすべてダーウィンが教えてくれた - Wikipedia
登場する作品