BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「生物学的に、しょうがない!」 2021

生物学的に、しょうがない!

★★★☆☆

 

内容

 駄目だと分かっていてもついやってしまうことや、やるべきだと分かっているのについ疎かにしてしまうことなど、自己嫌悪に陥りがちな良くない習慣や思考法が、生物学的に見れば理に適っており、仕方がないことであることを紹介していく。

 

感想

 多くの人が抱えている問題や悩みなどが、生物学的に見るとしょうがないことを示し、気持ちを楽にさせてくれる本だ。「人前で話すの苦手なの、しょうがない!」などのトピックが並び、それぞれが短く簡潔に解説されているので、ちょっと時間が空いたときに読むのにちょうど良い。

 

 個人的になるほどと感心したトピックは、「年をとると涙もろくなるの、しょうがない!」だ。人間の脳は先ず本能を司る部分、次に理性を司る部分が形成され、年を取ると今度は逆に理性を司る部分から死んでいく。だから本能をコントロールする理性が弱まり、涙を抑えきれずにすぐに泣いてしまうようになるとの事だが、理性が弱まっても本能さえあればとりあえずは生きていられるわけだから理に適っている。

 

 

 年を取ると赤ちゃんに還るというのは、科学的にあながち間違っていないわけで、昔の人の観察力はすごいなと感心してしまった。年を取ると涙もろくなるのと同様に、怒りっぽくなったり、我慢が出来なくなったりもするが、それらも確かに赤ちゃんと似ている。

 

 だから少し困ったお年寄りには赤ちゃんのように接すればいいのか、と思わなくもないが、残念ながら赤ちゃんほど可愛くないのだが最大の難点だ。それに本人に自覚がないから赤ちゃん扱いすると当然怒る。知恵や経験を蓄積しているだけに、結局色々と厄介だ。

 

 ほとんどのトピックは、生物学的知識がなくても何となく想像がついてしまうようなものだったのであまり驚きや発見はなかったが、冷静になれないほどひどく落ち込んでいる人には気づきを与え、救いとなることもあるのかもしれない。

 

 トピックの中には、「上司への報告が遅れてしまうのは、報告したくないと思っているからだ」みたいな、それのどこが生物学的なの?と思ってしまうようなものもあったりした。それから参考文献などが挙げられておらず、紹介された内容に興味を持ってもそれ以上詳しく調べることが出来ないのが残念だった。

 

 あとがきで著者が、生物学的な見方を身に付けると、生きるのが楽になることもあると述べていたが、確かに日常生活であまりそれを意識することはないかもしれない。熱をこめてそんな話をする状況と言えば、浮気の言いわけをするときくらいしか思い浮かばない。

 

著者

石川幹人

 

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com