★★★★☆
あらすじ
イスラーム党が政権を握ったフランスで、大学教授の男が職を解かれる。
感想
こういう話にリアリティを感じるほど欧州は切実なのかと、改めて認識させられた。確かに最近の欧州のニュースはきな臭いものが多い。自分たちは衰退の道を歩んでいると薄々感じているとしたら、新しい何かに希望を見ようとするのもわからないではない。
ぼくは、自分のために生きることができなかったが、では、誰のために生きてきたというのだろう。
p218
イスラムが政権を取ってイスラム的な政策を行い、重要な役職の人間たちがこれに従う社会になってしまったら、大抵の人は同じように従うしかない。それ以外の道は生き難い。こうやって社会は変わっていくのだろう。キリスト教的な世界からイスラム的な世界へ変わっただけと考えれば、そんなに驚くに値することでもないのかもしれない。
主人公の男の、ためらいながらも一夫多妻制についての情報を聞き出そうとするところなどは非常にリアル。 女性はどう思うかわからないが。イスラムに改宗する女性ってどれくらいいるのだろうか。
どこかジョージ・オーウェルの「1984年」を連想させるような結末だった。
著者
ミシェル・ウエルベック
登場する作品
Le drageoir aux épices (French Edition)
MARTHE, HISTOIRE D’UNE FILLE et autres histoires (French Edition)
With the Flow: And M. Bougran's Retirement (Hesperus Classics)
ニーチェ全集〈14〉偶像の黄昏 反キリスト者 (ちくま学芸文庫)
「近代俗語辞典」 リゴー