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「「最悪」の医療の歴史」 2014

「最悪」の医療の歴史

★★★☆☆

 

内容

 かつてその時代の最先端として行われていた酷い医療行為の歴史。

 

感想

 古代から中世の動物の血や内蔵を塗ったり占星術を利用する等といった、いわゆる「おまじない」のような医療は、昔のことだからと微笑ましい気分で読んでいられるのだが、時代が徐々に現代に近づいてきても、一向に「おまじない」的行為から変化がないことに段々と恐ろしくなってくる。つい最近までこんなことをやっていたのかと目を疑いたくなってくる。

 

 それでも実際に医療は進歩しているわけで、逆にどのように進歩していったのか一般的な医療の歴史も知りたくなってくる。それを読んで安心したい、という気分だ。

 

 

 紹介される様々なとんでもない医療にも驚かされるが、それにもまして信じられないのが中世の医師たちの態度。

 

 中世の医師はとりわけ学問を重んじ、実践を見下していた。彼らの仕事は患者にああだこうだと薀蓄を傾けることで、治療することではないのだった。伝染病であろうとなかろうと、患者の体に触れるのは避けるべきだとされていた。

p28

 

 彼らは古い時代の医療やその書物を崇拝していて、例えば実際に人体を解剖した時に、書物の内容と違った場合は間違えているのは死体の方だとみなした。まるで宗教のようだが、おかげでこの時代の医療は進歩せず停滞したという。

 

 これらの「最悪」の医療の歴史を読んでいると、紹介される酷い医者たちはただ人類の特徴を示しているのに過ぎないのかもしれない。昔ながらのやり方を神聖視し、新たな試みに消極的な保守的な所。自分たちの高尚な専門的知識が庶民には伝わらないようにラテン語で本を出して威厳を保とうとする権威主義的な所。汗や血にまみれた白衣をまとい、手を洗わず医療行為を行うのが医師の誇り、とかいう意味不明な精神論。思い込みで因果関係を解釈したり、都合の良い部分だけを取り上げて、それ以外は無視してしまう所。今でも社会に出るとこれと似たような人たちをよく見かける。

 

 大真面目にゾッとするような医療行為が行われた時代を知ると、つくづく現代に生まれてきてよかったと思う。とはいっても、数百年後の人びとが現在の医療を知ったら同じことを言うのかもしれない。

 

著者

ネイサン・ベロフスキー

 

「最悪」の医療の歴史

「最悪」の医療の歴史

 

 

 

登場する作品

「ヒポクラテス大全」 ヒポクラテス

「スミス・パピルス」

「カフン・パピルス」

「ギリシア詩文選」

「痔について」 ヒポクラテス

「エピグラム」 マルティアリス

「医学の薔薇」 ジョン・オブ・ガデスデン

「ボールズ医術テキスト」

「ロジェリーナ」 ロゲリウス・サレルニタヌス

「尿について」 ジル・ド・コルベイユ

「デ・アドヴェント・メディチ(往診について)」 アルキマタエウス

「カウテラエ・メディコルム(医師の手引き)」 ガブリエル・ゼルビ

「トロ・トゥーラ」

「外科学」 グリエルモ・ダ・サリチェト

「イエハン・イペルマン先生の外科学」 イエハン・イペルマン

「道を知れ」 ヒルデガルト・フォン・ビンゲン

「サレルノ養生訓」

「トロトゥーラ」

「貧者の宝」 教皇ヨハネス二一世

ザ・リバー(REMASTER)

「医学の真髄」 トマス・ブルギス

「体内感応説」

The Signature of All Things (Perfect Library)

「蔑視された職業と社会の除け者」 キャシー・スチュアート

「恋の病について」 ジャック・フェラン

「恋の病の外科的治療」ジャック・フェラン

「医学の本」 オスヴァルト・ガベルトハウアー

「珍しい治療の観察」 ヨハネス・シェンキウス

「ラップランドへの旅」 カール・リンネ

Egotism; or, The Bosom Serpent (Annotated): With Biographical Introduction (English Edition)

「歯の痛風に関する全論考」 ヨハン・ストロベルベルガー

「英国薬局方」 

修理屋 (1969年) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

「生ぬるいビール、あるいはそのようなビールは冷えたビールよりはるかに健康的であることを明らかにするための論考」

気象論・宇宙について (新版 アリストテレス全集 第6巻)

「デ・クリステルブス(浣腸について)」 ド・グラフ

「精神病に関する医学的調査と所見」 ベンジャミン・ラッシュ

Zoonomia: Or, the Laws of Organic Life

フランケンシュタイン

「家庭の医学外科学事典」

「対抗刺激の理論と実践」 ジル・ド・ラトゥレット

看護覚え書―対訳

「子宮治療と婦人病の手引き」

「稲妻の一撃による喘息の治療」

「電気治療の方法」 S・H・モーネル

「外科術全般の観察と治療」 

De Humani Corporis Fabrica

「医学の精髄」第四版 ジェームズ・クック

「秘密の妙薬と医療制度」 チャールズ・オールソン

「舌学」 ベンジャミン・リッジ

「動く腎臓ー精神障害、頭痛、神経衰弱、不眠症、精神疾患、その他の神経系疾患の原因」 コーネリアス・サックリング

 

 

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