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「女囚701号/さそり」 1972

女囚701号さそり 

★★★★☆

 

あらすじ

 愛した男に騙され刑務所に入れられた女が、看守や他の女囚に目を付けられ虐げられながらも耐え、裏切った者たちへの復讐の念を募らせる。

 

感想

 オープニングは、君が代・日の丸の掲揚から始まり、主人公の脱走未遂、映画タイトルの表示、そして主題歌が流れる中、身体検査で全裸の女囚たちが行進するシーンが続く。この一連の流れで、オープニングから惹き付けられ、つかみはOKといったところだ。

 

 表情を隠すような長い黒髪とそこから覗く鋭い目。主演の梶芽衣子はほとんど台詞はないのに圧倒的な存在感を放つ。その睨みつけるような眼差しだけで何事にも屈しない意志の強さが伝わってくる。ただ、積極的な行動に出るわけではなく、反抗的な目をするだけで、実際には黙々と理不尽な命令に耐えているところは、日本人ぽいかもしれない。

 

 

 だがそれだけじゃなく、自分を騙した男に復讐するため、なぜか半裸で襲いかかる狂気を感じさせる一面や、囚人になりすまし懐柔しようとした女刑務官を、色仕掛けで骨抜きにしてしまう男らしい?一面もあったりする。

 

 映画の前半は女囚同士の対立や刑務官と女囚の対立が描かれていて、それほど主人公が目立っているわけではない。ただ女の刑務所で起きていそうなことを描いている印象だ。穴を掘っては埋めるという単純作業を、様々なパターンで推してくる警務官たちの懲罰的な嫌がらせや、主人公と反目する囚人がまるで妖怪のように襲いかかるシーンなどはちょっと笑えた。

 

 やがて主人公は、刑務所内のどさくさに紛れて脱走し、男たちに次々と復讐を果たす。それまでほぼ耐える一辺倒だっただけに、主人公がセリフもなく静かに淡々と、次々と復讐を果たす姿を見ているだけでも胸のすくものがあった。大きな帽子にサングラス、全身黒づくしの衣装は逆に目立つだろうとは思うが、その佇まいには格好良さがある。

 

 床の下から見たような映像や独特の色使い、主人公の立ち姿の全身を横倒しにして、横長の画面いっぱいに映し出したりと、凝った映像表現も見られて面白かった。期待しがちなお色気シーンも勿論あるが、全体としては硬派な雰囲気の映画となっている。

 

 冒頭の君が代、日の丸掲揚のシーンの後で国家による表彰状が踏みにじられたり、シーツが血で日の丸ににじむシーン、ラストのナイフが高く舞い上がり、はためく国旗の前できらめくシーンなどは、権力を振りかざす傲慢な者たちへの反発を示しているようにも感じられた。

 

スタッフ/キャスト

監督 伊藤俊也

 

原作 さそり (1)

 

出演 梶芽衣子/夏八木勲/渡辺やよい/扇ひろ子/根岸明美/横山リエ/伊達三郎/室田日出男/小林稔侍/たこ八郎

 

女囚701号/さそり - Wikipedia

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