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「女囚さそり 第41雑居房」 1972

女囚さそり 第41雑居房

★★★☆☆

 

あらすじ

  刑務所長への反抗的な態度で看守らに徹底的に痛めつけられている主人公は、隙を見つけて他の女囚らと脱走する。

 

感想

 喋ることなく、圧倒的な存在感と目力だけで主人公を演じる梶芽衣子。確かに説得力はある。そして無口な主人公に代わって間を埋めるのが、脱走した女囚たちのリーダー格を演じる白石加代子。彼女も強烈なインパクトの演技をしている。バスに立て籠もるも弾が尽きた時の表情やしぐさが、何とも言えず良かった。彼女は今でも大女優といった感じで活躍しているが、彼女にも若い時があったのだなと当たり前のことに感じ入ってしまった。

 

 看守が女囚を凌辱し、脱走した女囚たちは野犬を撲殺して夕食にし、その女囚を見つけた一般人は襲い掛かる。ちょっと引いてしまう世界観。フィクションなのでこれが当時の日本社会とは言わないが、この世界観をすんなりと受け入れられるマインドではあったとは言えるだろう。登場人物がちらっと戦争の話をしているが、この当時は戦争を体験した人のほうが多いからかもしれない。この時は戦後30年弱なので、今でいうと令和の時代にまだ昭和を知っている人間がたくさんいるのと同じようなことか。

 

 

 そんな世界観が、独特の構図や色彩感覚、抽象的な表現を交えながら描かれていく。なかなか芸術的とも前衛的ともいえる。こういう事にこだわれるという事は、作る側の映画に対する熱の高さとそれを支える予算があったという事で、良い時代だったのだなとしみじみとしてしまう。

 

 冒頭から一言もしゃべらない主人公。そのまま最後まで行くかと思いきや、途中でついに言葉を発するが、結局しゃべったのはその一言だけだった。その一言がしびれるような一言なら納得なのだが、なんでもない言葉だったのが残念。それなら一言もしゃべらないほうが良かったような気もする。

 

 こんなに主人公が喋らないのに映画が成立しているのは、当然、白石加代子らその他のキャストの存在もあるのだが、意外と時々挿入される梶芽衣子が歌う歌があることが大きいのかもしれない。一言もしゃべらないが、歌で心情を代弁しているので、なんとなく主人公に肩入れできる。そして印象的なので映画館を出た後に口ずさみたくなるのもよく分かる。

 

 しかし映画冒頭に流れる主題歌「怨み節」は歌詞がすごかった。凄すぎるのでレコードを出すときには歌詞を変えて録音したらしい。

 

 ラストはさそりの正装に着替えての復讐劇。囚人の時は露出多めで、見せ場の復讐の時は肌を見せない服装なのは何を意味しているのだろうか。野性的な感情のおもむくままではなく、理知的で冷静な判断をした上での行動だということか。厳粛な儀式という意味合いもあるのかもしれない。

 

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 そしてエンディングの他の女囚たちと駆け回る幻想的なシーン。ピクミンみたいだった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 伊藤俊也

 

原作 さそり 小学館文庫版 全11巻セット

 

出演 梶芽衣子/白石加代子/伊佐山ひろ子/渡辺文雄/室田日出男/小松方正/小林稔侍/阿藤快

 

女囚さそり 第41雑居房

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