★★★☆☆
内容
認知心理学者によるスマート・シンキングをする方法の紹介。
感想
どのような独創的な思考法を紹介してくれるのか、と期待して読み始めると、肩透かしを食らう。著者によるスマート・シンキングの定義は下記の通りだ。
スマート・シンキングとは、実はあなたがどのような知識を持ち、それをいかに利用するかに関わっているのだ。
p17
つまり、独創的なアイデアといえども、基本的には既存の知識を組み合わせたものに過ぎないというのが著者の考えとなっている。だからサブタイトルの通り、質の高い知識を身につけ、必要な時にそれを取り出せさえすれば、自ずとスマート・シンキングとなるというわけである。
そしてそんなスマート・シンキングをするためには、まずはそれを促すようなスマートな習慣を身につける必要がある、ということで習慣についての話が始まる。思考法の話を期待して読み始めたら、いきなり習慣の話だった。
習慣を身につけたら質の高い知識を記憶するようにしましょうと、今度は記憶術の話になる。質の高い知識を記憶できるようになったら、必要な時に取り出せるようにしましょうと、これも記憶術の一環だ。
ようやく、思考法についての話が始まるのかと思ったら、今までのことが全て出来たらもうスマート・シンキングは出来ているでしょ、という雰囲気になっていて戸惑ってしまう。いくつかアドバイスのようなものはあるのだが、全然、記憶を活用してスマートな思考が出来るような気がしない。
そんな不安な気持ちになってしまっているのに、もう完全にスマート・シンキングのマスター扱いされて、スマート・シンキングを啓蒙していきましょうとその方法を伝授され始めてしまった。
心理学の知見が随所に取り入れられていて、概ねこれらの理論は間違ってはいないのだろうが説得力に欠ける。質の高い知識を必要な時に取り出してどうするのかが一番知りたいのに、その手前で話が終わってしまっている。何度も読み返さないと頭に入ってこない分かりづらい文章もあって、どこかすっきりしない読後感だった。
著者
アート・マークマン
訳 早川 麻百合
登場する作品
シェイクスピア全集 (2) ロミオとジュリエット (ちくま文庫)
決断の法則―人はどのようにして意思決定するのか? (トッパンのビジネス経営書シリーズ)