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「戦争と人間 第三部 完結篇」 1973

戦争と人間 「完結篇」

★★★☆☆

 

あらすじ

 戦線が拡大し、戦地に赴いた人々とその帰りを待つ人々。187分。 

 

感想

 三部作の最後の作品。今回は戦地でのシーンが多く、特に終盤のノモンハンでの戦闘シーンはかなりの迫力で見ごたえがあった。戦争の悲惨さや不毛さを訴えかけるような内容となっている。

 

 そして今回も日本の駄目さ加減がしっかりと描かれている。データ分析で日本は戦力的に不利との調査結果を提出したら「貴様、日本が負けると言っているのか!」と恫喝し、「戦争は数字だけで決まるものじゃない!」と嘲笑し、そして実際に負けても「負けていない!」と言い張る。無邪気なまでの楽観論と精神論。これでは勝てるわけがない。とはいえ、彼らの多くは自決して責任を取っており、死ねば許されると思っている所に甘さを感じてしまうわけだが、それでもまだいい。それよりも地位が高い人物ほど責任を取ろうとしないのが嫌になる。日本は、責任逃れが上手い人物だけが出世できるシステムになっているという事なのだろう。今の日本も大体そんな感じのようだ。

 

 

 それから軍事訓練シーンで、上官が生意気な初年兵に「日本に戻られないようにしてやる」と言っていて引いた。理不尽とも思える辛い訓練は、戦地で死なないためだと思えばこそ納得できるものだが、そうではないのならただのいじめの延長でしかない。理不尽な命令をしたり、殴ったり蹴ったりするのは、単なるストレスフルな集団生活の憂さ晴らしという事か。自軍の中でマウントを取ることしか考えていないようでは、これまた戦争に勝てるわけなんかない。

 

 これまでの様々な登場人物たちの人間ドラマが、最後にひとつの流れとなって大団円を迎えるのかと思っていたが、ほとんどのエピソードはやりっぱなしで有耶無耶のままに終わってしまい、だいぶ肩透かしを食らった気分になった。観終わった後に、そういえばあの人物はどうなったのだろうと、いろいろ気になってしまった。でも実際の生活でも、あの人は今何をしているのだろうと思うことは良くある話なので、常に結末を知ることが出来るわけがないというのもまた人生、という事なのかもしれない。

 

 今回は吉永小百合演じる社会運動家で戦争に行った男の妻が、いきなり家に踏み込んできて、いきり立っている憲兵隊を前にしながら、彼らを無視するかのようにひとり歓喜に打ち震える姿に胸が熱くなった。おそらく当人は信じられないほどの良い知らせに我を忘れて喜んでいるだけだが、それが、国家など知った事か、もっと大事なものが私にはある、という反骨精神を象徴的に示しているかのようなシーンになっている。

 

 本当は第四部まであり、中心となっていた新興財閥の人々が没落する様子を描く予定だったらしいが、それは是非観たかった。これまでさんざん憎たらしい言動を観させられてきたのに、彼らの事に何も触れずに終わられてはすっきりしない。さすがに彼らも歴史の渦に飲み込まれていったのだろうというのは予想ができるが、それをしっかりと描いてカタルシスを感じさせて欲しかった。

 

スタッフ/キャスト

監督 山本薩夫

 

原作 戦争と人間 1~運命の序曲1、2~ (光文社文庫)


出演 滝沢修/芦田伸介/高橋悦史/浅丘ルリ子/吉永小百合/北大路欣也/高橋英樹/江原真二郎/山本圭/加藤嘉/藤原釜足/絵沢萌子/上田耕一/(声)鈴木瑞穂

 

戦争と人間 (映画) - Wikipedia

戦争と人間 シリーズ 戦争と人間 完結篇 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

登場する人物

東條英機

 

 

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