★★★★☆
内容
著者が辺境の地を旅し、そこで見聞きしたこと、出会った人たちとのエピソードを綴る。
感想
こういう自分の普段の生活からはかけ離れた境遇で過ごす人たちの話を読むと、自分の知ってる世界というのは世界のほんの一部でしかないことを思い知らされる。そしてそういう世界があることを知り、興味本位で近くまで行くことがあっても、その世界に踏み込むことはないのだろうな、と思ってしまった。だから、こうやって本を読んで追体験させてもらえるのは面白い。
様々なエピソードの中で面白かったのは、八甲田山にまつわる怖い話の真相を探る話。取材した観光地で働く人々たちが、何の悪意もなく人々の期待に応えて怖い話の創作に加担していく様子が印象的。商売柄ということもあるのだろうが、土地柄ということもあるようで、長い冬を家にこもって皆と過ごすために、自然と話を作り上げるようなところがある、という考察はなるほどと思った。霊的なものに対する態度も、他とは違うのかもしれない。
ようやく晩飯の時間がきた。それにしても旅館というのは時計を置かないクセに、時間にはうるさい。
p94
今まで何とも思っていなかったが、この文章を読んだら、確かに、と急に憤りのようなものを覚えてしまった。迷惑をかけてはいけないと、時間を気にしながら慌ただしく食事に向かう準備をしたりしていた。まぁ、だからといってこれからもいそいそと時間を守るのだろうが。
ワケあり物件に今でも住んでいる知り合いがいる、その男は不義理をして蒸発してしまった、とか、時々ちょっと意味がわからない文章が見受けられて、ん?となってしまう所もあった。
著者
上原善広
登場する作品