★★★☆☆
内容
限りのある手持ちのリソースの中で、どのように成果を出すのか、その方法を紹介する。
感想
ストレッチとは、多くのリソースを望むのではなく、手持ちのリソースの可能性を受け入れ、それを行動の手がかりにする考え方であり、技能である。ごくシンプルだが効果は絶大、おまけに学習によって誰でも身につけられる。
p17
何かを始めようとする時、人材や設備、資金などたっぷりと準備した上で始めたいと思うものだが、それが十分にないために一向に始められないこともある。そんな無いものねだりをしていないで、手持ちのカードで頑張ろうという、割と日本人にはしっくり来るような内容となっている。
十分な材料が無いからこそ、別のもので代用するという柔軟性が生まれたり、専門の知識がないからこそ出来る発想があったりというような、限られたリソースだからこその強みが述べられている。個人的には特に真新しく感じるようなことはなく、これまで言われてきたことを「ストレッチ」という視点でまとめてみた、という印象。これ自体も「ストレッチ」のアプローチなのかもしれない。
ただ面白いと感じるエピソードはいくつかあった。人的資源を活かす方法の中で、人は無意識に期待に応えようとするので、期待すれば結果として期待通りになる、いわば「自己成就的予言」という現象が起きるという話。
これはマイナスの期待でも起きる。「改革を実行すると抵抗される」という経営者の思い込み(期待)が、従業員の前向きな意見を「反発」と受け取り、抵抗者として排除しようとしてしまう。そのような経営者の態度が、実際は殆どが賛成でも反対でもない中立の立場の従業員たちを反発させ、結果として経営者の期待通りの抵抗勢力に変えてしまうという。
このマイナス方面の自己成就的予言は、皮肉を感じる悲しき現象だが、きっと色々な場面で起きているのだろうと想像してしまう。うちはサボる社員ばかりだとか、無能な部下ばかりだとか「呪いをかけてる」会社があったら気をつけたほうが良さそうだ。
それから、ブランド物などの富や成功の象徴のような「地位財」は、貧富の格差が大きい地域の方が関心が高い、という話。裕福な人間だけでなく、貧しい人間も高い関心を示しているというのが興味深い。彼らは必要以上のリソースを追い求めて消耗しているということになる。
もちろん何もかもを、手持ちのリソースでやりくりするのは無理がある。本書でもそういった指摘もされており、おおよそ納得できることばかりだったが、これを読んで10年前の低スペックPCをしたり顔で開発者に渡すような、曲解した人間が出てくるんじゃないかと、いらぬ心配もしてしまった。
著者
スコット・ソネンシェイン
- 作者: スコット・ソネンシェイン,Scott Sonenshein,三木俊哉
- 出版社/メーカー: 海と月社
- 発売日: 2018/04/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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登場する作品
Green Eggs and Ham (Beginner Books(R))