★★★★☆
内容
組織心理学者の著者による、誰もが「オリジナル」になれる方法。
感想
独創的な事を成し遂げてきた人びとをみると、とてつもない才能を持ち圧倒的な自信を持った、自分とは違う種類の人びとだとつい思ってしまう。しかし彼らも自分たちと同じように失敗や不安を恐れる普通の人間で、誰もが彼らのようになれると著者は力説する。
くり返しになるが、オリジナルなことを実現して成功している人たちの中身は、私たちとさほど変わるものではない。彼らも、みなと同じような恐怖や不安を感じている。
しかし、何が違うかといえば、「それでも行動を起こす」ということだ。
「失敗することよりも、やってみないことのほうが後悔する」
彼らはそのことを、身をもってわかっている人たちなのである。
p56
そして独創的な考えを生みだすだけではなく、重要なのはそれを実現することである。それには多くの人の力を借りる必要がある。どのように人びとに味方になってもらうか、どんな組織をつくるのか、誰と組むのか、実現のための方法が紹介されている。人びとの反発を招きやすいオリジナルな考えを実現させるためにはとても重要な事だ。
本書では、さまざまな実例や科学的な実験データを紹介しながら進行していく。同じ目的を持ちながら分裂してしまったアメリカの女性参政権運動の話や、オリジナルだったのにいつの間にか駄目な企業となってしまったポラロイド社の話など、それぞれのエピソードがなかなか興味深い。
そんな話のひとつに、出生順が第2子以降の子供は、保守的でなく柔軟な考えをもっている、というのがあった。第一子は親の注目を集めやすく、その期待に応えるために保守的になりがちで、それ以外の子供はそんな第一子の影に隠れて自由を謳歌しやすいから、というのが理由だが、なんとなく理解できる。
ということは、少子化が進み、一人っ子ばかりで第一子しかいない世の中になると、世界は保守化するのだろうか?もしそうなら独創的な新しい出来事は起こりにくくなって、社会が停滞してしまうのかもしれない。一人っ子に関してはどのような性格になるのか、予想しにくいらしいが。
別にオリジナルでなくても生きてはいけるが、オリジナルであること、そしてそれを目指す人生の方が楽しそうでしょ、という著者のメッセージが、明るい気分にさせてくれる。
著者
アダム・グラント
ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (単行本)
- 作者: アダムグラント,シェリルサンドバーグ,Adam Grant,Sheryl Sandberg,楠木建
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2016/06/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
登場する作品
ディルバート ビジネス社会の法則―会社の備品をくすねて優雅に暮らそう
LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲
A Wrinkle in Time (Wrinkle in Time Quintet)
征服者ロビュール(ジュール・ヴェルヌ・コレクション) (集英社文庫)
この作品が登場する作品