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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ピグマリオン」 1913

ピグマリオン (光文社古典新訳文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 街で出会った下町の娘に、半年で上流階級の話し方を身に着けさせられるか、賭けをした二人の言語学者。

 

感想

 下町の娘は訛りがひどい設定だ。彼女の喋る台詞は、日本語として相当苦しいものがある。オリジナルのひどい訛りを日本語に翻訳しなければいけないので仕方がないのだが、それにしてもそんなヤツいないだろ、みたいな話し方だった。だがどう考えても他にやりようがない。

 

 そんな彼女が言葉に詰まった時に発する奇声のような台詞は、ちょっと面白い。舞台で女優がどんな風に再現するのか、観てみたくなる。

 

 

 彼女に言葉を教える言語学者を二人にしたのは、うまい設定だった。教えるのは上手いが、口が悪く性格に難があるキャラクターと、常に紳士的なキャラクター。二人のおかげで、彼女が上流階級の話し方を身に着けたのは、教え方が上手かったからだけなのか、彼女を上流階級の女性のように扱ったからなのか、それともその両方が必要だったのか、ただ彼女の才能だったのか、色々と考えさせられる。

 

 貧しいなりにも自立して生きていた女が、上流階級の身のこなしを身につけて誰かの飾りとして生きることは幸せなのか、どんなに努力しても認めてほしい者から認められないと心は満たされないのか、そもそも上流階級とは身のこなしや話し方といった薄っぺらいものでのみ判断される人種なのか、等々、この物語には様々な皮肉や指摘が含まれている。

 

 それなのに、著者の後日譚で触れられているように、観客は小汚い娘が金持ちに見初められて美しい淑女となった、というシンデレラストーリーとして喜んでいる。著者の意図とは関係なく、観客は観たいものを観たいように観てしまう。結果として後に「マイ・フェア・レディ」の映画にもなったりして、大成功した戯曲とはなったが、きっと本人の胸中は複雑だったはずだ。こんな風に作品が独り歩きしてしまうこともあるので、作者が伝えたいことを100%伝える、という単純にみえる作業も、実際は全然簡単なことではないのだと痛感させられる。

 

著者

ジョージ・バーナード・ショー

 

ピグマリオン (戯曲) - Wikipedia

 

 

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