★★★★☆
あらすじ
ウサマ・ビン・ラーディンの行方を追うCIA分析官。実話をもとに作られた映画。
感想
冒頭からいきなり拷問シーン。ひどい描写はなかったが、こういう出来れば隠しておきたいことをちゃんと描くのはエラい。ただ、こういう情報を聞き出すための拷問よりも、ただただ尊厳を傷つけるためだけの虐待の方が問題だったとは思うが。
テロ組織という、実態がよくわからない集団を追い詰める難しさがよく描かれている。関係者を捕らえ尋問しても、出てきた情報が真実かどうかも良く分からないし、その関係者すらもすべてを知っているわけではないかもしれない。多くの人間から情報を集めることで次第にその精度が上がっていく。
やがて主人公はウサマ・ビン・ラーディンが潜伏すると思われる建物を発見する。それなりの可能性があると考えられるが、アメリカは動かない。じれる主人公。それなりの確率があるなら動けばいいのにと思ってしまったが、よく考えればその地はパキスタン。他人の土地で好き勝手やる訳にはいかないし、もし実行して間違いだったら窮地に陥ってしまうから慎重にならざるを得ないということか。とはいえそれでも、アメリカは他人の土地でかなり自由を謳歌しているとは言えるのかもしれない。
クライマックスの突撃シーン。普通の映画なら味方も何人かやられつつも遂には追い詰め、ターゲットとの大勝負、となる展開だが、現実は呆気ない。急襲に敵は為す術なくばたばたと倒れ、ターゲットも殺害された後にターゲットだったと確認される盛り上がりの無さ。カタルシスはないが、それでも緊迫感はあった。現場の隊員たちのどこか戸惑ったような、淡々とした表情が印象的だった。
アメリカ人を恐怖に陥れたテロの首謀者を遂に殺害。とはいえ、当時も思ったのだが、人を殺して大喜びというのは何かが間違っているような気もする。だから、ラストの主人公の表情は正しい反応と言えるような気がした。アメリカ万歳的なヒロイックな映画にしなかった事に好感が持てる。
スタッフ/キャスト
監督/製作 キャスリン・ビグロー
出演 ジェシカ・チャステイン/ジェイソン・クラーク/ジョエル・エドガートン/ジェニファー・イーリー/マーク・ストロング/カイル・チャンドラー/エドガー・ラミレス/レオン・パネッタ/ジェームズ・ガンドルフィーニ/ファレス・ファレス/ハロルド・ペリノー・ジュニア/スコット・アドキンス/マーク・デュプラス/ジョン・バロウマン/フレドリック・レーン/クリス・プラット/カラン・マルヴェイ/テイラー・キニー/マイク・コルター/フランク・グリロ/クリストファー・スタンリー/レダ・カテブ/スティーヴン・ディレイン/マーク・バレー