★★★★☆
あらすじ
ジゴロとして生計を立てる男は、数日前に相手をした女性が殺されたことから、犯人として疑われることになってしまう。
感想
ジゴロとして一流だと自負する主人公。エージェントとも強気で交渉し、仕事も選ぶ。気楽なものだと思ってしまわないこともないが、体を鍛えたり、知性やセンスを磨いて日々努力している。結局、どんな仕事も一流になるのは簡単なことじゃないという事だ。
映画の中では、主人公の仕事ぶりが一部始終ではなく、その一部のみを断片的に描いていく。すべてを描くと下世話になりすぎるし、端折ってしまうとリアリティが無くなってしまう。そういった世界に詳しくない人でも何となく理解できる程よい描き方。
そしてその断片的な描き方が、主人公のどこか空虚な心を表しているようにも感じる。仕事には情熱を示すものの、仕事仲間には心を開かず、常にビジネスライクな態度で接している。この事が後に彼に災難を呼び込む遠因となってしまう。
そんな中、勘違いから一人の女性と知り合った主人公。心を惹かれるが、長い間、女性を客としてしか見てこなかった彼には、うまく心の整理が出来ない。気がつくとビジネスライクな接し方をしてしまうことも。疑似恋愛をビジネスにしてしまった事が、彼の心にポッカリと穴を開けてしまっているのだろう。
殺人事件の容疑者となり、やがては陰謀によって犯人に仕立て上げられてしまった主人公。自らのそれまでの行動を思い、アイデンティティであった仕事への美学もあり、差し伸べられた救いの手にも、諦めの気持ちが勝って受け入れる気になれない。
そんな彼の心をゆっくりと根気よく溶かしていくローレン・ハットン演じる女性。彼の心の動きが見えるような短いシーンがいくつか続いた後で、迎えた美しいエンディング。このエンディングは映画館のスクリーンで見たかった。無駄な後日譚もなく、いい余韻に浸れる映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ポール・シュレイダー
製作 ジェリー・ブラッカイマー
出演
ローレン・ハットン/ニーナ・ヴァン・パラント/ヘクター・エリゾンド
撮影 ジョン・ベイリー
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