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「そのひとクチがブタのもと」 2007

そのひとクチがブタのもと

★★★☆☆

 

内容

 人は何故食べ過ぎてしまうのか。人間の無意識に働きかけている様々な食べ過ぎの要因を紹介し、その対策を教える。著者は食心理学の研究所主宰者。

 

感想

  よくある特別な食材を積極的に摂ったり摂らなかったりする事で体重を減らそうとするダイエット本ではなく、食べ過ぎる仕組みを解明して対策することで適切な量の食事をしようと促す本になっている。

 

 我慢したものが愛情でも休暇でもテレビでも大好きな食べ物でも、それは関係ない。我慢するというだけで生活を存分に楽しめなくなる。にもかかわらず、ダイエット実践者が真っ先にやるのは、コンフォートフードを控えることだ。これがダイエット失敗の原因になる。

p34

 

 ダイエット法あるあるではあるが、大抵のダイエットは普段の食生活を一変させるものが多い。糖質制限であれば、今までの食生活から急にご飯が食べられなくなる。そうなれば自ずと楽しくなくなり、我慢している感が強くなってストレスがたまる。そしてダイエット終了後は我慢していた食べ物を食べてしまって結局リバウンドしてしまう。

 

 

 そういった何かを我慢するダイエットではなく、普段の食事はそのままで食べる量を減らすことでもダイエットができるはずだ。それも無意識にできればなおのこと良い。ほとんどの人が無意識に食べ過ぎているのなら、そのメカニズムを解明して、無意識に食事の量を減らすことも出来るはずで、それを活用すればいい。そうすればストレスなく自然と体重が減っていくという考え方だ。劇的に体重は減らないかもしれないが、緩やかではあるが確実に体重が減る。

 

 本書では料理の品数、食器の大きさや形、音楽の種類、その時の周囲の雰囲気や本人の集中力など、様々なものが食事の量に影響を与えていることを教えてくれる。その多くが人間がいかに雑に食事量を認識しているのかを示していて興味深い。同じ量でも大きな皿にちょこんと載っていれば物足りなく感じ、小さな皿に山盛りであればたくさん食べたと思い込んでしまう。

 

 そして低カロリーでヘルシーと謳われている食品は、必要以上に健康的だと思い込んだり、少しだけ低カロリーなのにすごいカロリーが低いと思い込んだりして食べ過ぎて、結局、通常の食品よりカロリー摂取量が多くなってしまうのもよくあることだ。そのくせ、自分はヘルシーな食事をしたと思い込んでいるからたちが悪い。

 

 年々容量が大きくなっていくファーストフードの話題も出てくるが、著者が企業を責めるのではなく、彼らは客が望むものを売っているだけだと冷静な指摘をしているのは好感が持てる。確かに彼らも客が望み、売れるのならヘルシーメニューだってどんどん作るはずだ。そう考えると年々食べ物が小さくなっていくセブンイレブンはダイエットにはいい企業なのかもしれないと一瞬思わなくはないが、あんなあからさまに小さくされたらやっぱり腹が立つのでそんなことはなかった。気づかないように少しずつ小さくしてくれないと。

 

 あまり内容とは関係ないが、4リットルのお菓子を入れるボウルの話とかが登場して、日本と感覚が違い過ぎて混乱したり、大豆の嫌われっぷりが紹介されていたりして、アメリカとの文化の違いを感じることも出来る。それから、居んようにもあったがコンフォートフードという概念がいまいち掴めなかった。日本人の米みたいなものかなとは思ったのだが、それがクッキーだったりポップコーンだったりする人もいて何か違う。おふくろの味というわけでもないようなので、アメリカ人とは食に対する考え方が違うのかも、と思った。

 

 本書は紹介された食べ過ぎの要因を逆手に取って今度はいつもより食べる量を減らそうというのが趣旨で、具体的には気づかない程度に食事の量を減らすということだが、実際にやろうとすると意外と難しいのかもなと思わなくもない。料理するにしてもいつも一個使っているものを半分に減らしてしまうと減らし過ぎだし、かといって9割使うと残りの1割の処置に困ってしまう。著者はファーストフード店では受け取ってから席に着くまでにポテトを少し捨ててしまいましょうと言っているのだが、それはめちゃくちゃ抵抗がある。でも量り売りなんて今どきほとんどないのでそれが正解なのかもしれないが、実際にやったら罪悪感に苛まれてしまいそう。

 

 ただこのやり方が一番ストレスなく、自然に体重を減らせそうな気がするのは確かだ。いつか「食事は残さずきれいに食べましょう」から「食事は無理せず残しましょう」と言われる時代が来るのかもしれない。

 

 本書は邦題的にはダイエット本だが、原題は「Mindless Eating:Why We Eat More Than We Think」(考えない食事:なぜ私たちは思っている以上に食べ過ぎてしまうのか)。もう一品注文させて客単価を上げたかったり、口コミで「価格のわりに量が少ない」と書かれたくない飲食店経営者や、販売数を伸ばしたい食品メーカーの人にとってもきっと役に立つにはずなので、一読してみるのもいいかもしれない。

 

著者

ブライアン・ワンシンク 

 

そのひとクチがブタのもと

そのひとクチがブタのもと

 

 

 

登場する作品

The Hidden Persuaders (English Edition)

ペイバック スペシャル・エディション [DVD]

The Volumetrics Eating Plan: Techniques and Recipes for Feeling Full on Fewer Calories (English Edition)

青い珊瑚礁 Ce (字幕版)

パール・ハーバー 特別版 [DVD]

Obese Humans and Rats (Psychology Revivals) (English Edition)

サウンド・オブ・ミュージック (字幕版)

ソイレント・グリーン (字幕版)

メラニーは行く! (字幕版)

ある愛の詩 (字幕版)

マイ・ビッグ・ファット・ウェディング(字幕版)

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クライシス・オブ・アメリカ (字幕版)

 

 

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