★★★☆☆
あらすじ
控えめな性格で誰にも相手にされない主人公の職場に、自分そっくりの男が入社してくる。イギリス映画。
感想
陰影の深い映像と時代や場所が曖昧な舞台、時おり流れる日本のグループサウンズと、不思議な世界観が出来上がっている。この奇妙な空間だと、主人公と瓜二つの男が現れても全く違和感がない。
職場では自分をアピールできずに影が薄く、好きな女性に声をかけることも出来ない主人公。すべてが人並みの能力を求める社会では評価されず、孤独を感じている。そこに現れた自分そっくりの男。
しかし、容姿はそっくりだが中身は正反対で、仕事は出来ないが外向的。二人が協力すればすべてがうまくいくのだが、やがてそっくりな男は主人公を利用し始める。そして、主人公の望んでいた仕事での評価と好きな女性を手に入れてしまう。居場所を失っていく主人公。しかし両者にはそれぞれ長所・短所が同じようにあるのに、外向的な人間の方が人生を楽しめるというのは不当な気がしてしまう。でも、実際の社会を見てもわかるが、それが現実だ。
そっくりな男はきっと主人公の願望のようなものを具現化した分身といえそうだ。その分身を取り込めることが出来るなら、すべてに人並みの能力を要求する社会では高く評価される人物となれる。しかし、主人公はそうは思いながらも、本心ではそれを拒否しているし、そんなのは自分ではないと思っている。
ドストエフスキーの小説が原作だという事を加味すると、どこにでもいるような個性のない人間を目指すよりも、長所や短所を持った個性的な人間でいたい、そんな社会であってほしいと訴えているような気がした。短所を無くそうとするよりも、長所を伸ばそうとする社会の方がきっと楽しいはずだ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 リチャード・アイオアディ
原作 二重人格 (岩波文庫)
製作総指揮 グレイアム・コックス/マイケル・ケイン/ナイジェル・ウィリアムズ/テッサ・ロス
出演 ジェシー・アイゼンバーグ/ミア・ワシコウスカ/ウォーレス・ショーン/ノア・テイラー/ジェームズ・フォックス/キャシー・モリアーティ/サリー・ホーキンス /J・マスシス /クリス・オダウド /クレイグ・ロバーツ/パディ・コンシダイン/ジェンマ・チャン/ラデ・シェルベッジア