BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「八月の濡れた砂」 1971

八月の濡れた砂

★★★☆☆

 

あらすじ

 高校を中退した友人らと夏を過ごす青年は、朝の海岸で男たちに捨てられた若い女と出会う。

www.youtube.com

 

感想

 あり余るエネルギーを持て余した若者たちのひと夏の姿が描かれる。しかしこの時代の若い男たちはすぐに女に襲い掛かる。当時はそんな映画が多かったので、この頃に青春時代を過ごした人の中に「若者はそれくらいの方が元気があっていい」とか言っちゃう人が出てくるのも不思議ではないのかもしれない。

www.buzzfeed.com

 

 だが考えてみれば、50年前の感覚で現代を生きている人たちがたくさんいるという事実はなかなか恐ろしい。特に日本はその年代の人たちが各界で力を握っているわけだから、日本が停滞するのも頷けてしまう。彼らはこの頃の感覚で今の日本を動かそうとしている。

 

 海の家がひしめくように建ち並び、人でごった返す映画の中の海水浴場の様子を見ていたら、人々が貪欲に娯楽を求めていた様子がよく分かり、やはりこの時代は日本に勢いがあったのだなと実感する。建物の中に「遊技場クロンボ」の看板が見えた時はそっと目をそらしてしまったが。

 

 

 前半は、目的もなく暇を持て余す若者たちが鬱屈を時に爆発させる様子が描かれ、青春映画にはよくある取り留めのない内容だった。だが中盤を過ぎて、主人公らがヨットに乗り込みクルーズに出掛けたあたりから面白くなってきた。映像も、それまではいかにも昭和なものだったのに、まるでヨーロッパ映画のような雰囲気を醸し出し始めた。

bookcites.hatenadiary.com

 

 この映画は照明にこだわりが感じられ、夜の海や太陽にきらめく大洋の様子、登場人物たちの眼差しなど、印象に残るシーンが多々あった。ヒロインのテレサ野田の演技はかなり残念だったのだが、ラストのインパクトのある画が欲しいがために彼女を起用したのなら納得できる。

 

 金持ち家庭の息子で、主人公を焚きつける不良役の村野武範は、髪型を含めてどこか劇画漫画のキャラクターのようで面白かった。彼の若い頃はこんな感じだったのかと興味深く見てしまった。

 

 刹那の感情で動いたところで結局は虚しさしか残らない。倦怠感が漂う結末だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 藤田敏八

 

脚本 峰尾基三/大和屋竺

 

出演 広瀬昌助/村野武範/テレサ野田/藤田みどり/山谷初男/地井武男

bookcites.hatenadiary.com

 

音楽 むつひろし/ペペ

 

八月の濡れた砂 - Wikipedia

八月の濡れた砂 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

この作品が登場する作品

bookcites.hatenadiary.com

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com