★★★☆☆
あらすじ
ある町にやって来て仲間と共に騒いでいた暴走族のリーダーは、住民の反感を買ってしまう。タイトルの読みは「あばれもの」で、原題は「The Wild One」。
感想
荒くれ者のバイク乗り集団のリーダーが主人公の映画だ。彼らは町から町へと移動を続けているようなので、全国を旅する流れ者たちなのか、少し遠出をしているだけの不良たちなのか、いまいち良く分からない。日本のものとは全然イメージが違うが、端的に言ってしまえば「暴走族」ということになるのだろうか。
主人公らはとある町にたどり着き、そこで傍若無人に振る舞う。暴走族はバイクの爆音に人々が顔をしかめているのを分かった上で、敢えてエンジンをふかして喜んでいるような人種だから、そういう人の嫌がることが出来るのだろう。大きな音に自分が強くなったと錯覚してしまうからというのもあるかもしれない。
ただそんな彼らを、町の人たちが怖がるわけではなく、迷惑がっているだけなのが不思議な感じだ。普通なら怖がって関わらないように距離を取ったり、見て見ぬふりをしそうなものだが、平気でズカズカと近寄って話しかけたりする。無知ゆえなのか、フロンティア精神を持つアメリカ人の国民性なのか、とにかく皆堂々としている。
主人公は、皆の先頭に立って暴れているわけではなく、ただ気に入った一人の女性を口説いているだけだ。リーダーなんだから絶対的な存在で皆を統率しているのかと思ったが、案外そうでもなく、好き勝手にやらせている。皆も多少彼に気を遣っている程度だ。主人公は警察のような公権力を嫌い、それに反抗心を見せているので、彼自身も権力を振りかざそうとはしないということなのだろう。
そんな主人公に惚れられるヒロインは不思議な存在だ。主人公を警戒しつつも凛としており、時にずけずけとモノを言ったり挑戦的な態度を取る。かと思えば急に乙女の姿や弱々しい姿を見せたりもする。盗んだトロフィーを大事そうに持つ主人公に対して、「あなたも同じで偽物ね」と言い放つところからも、彼女はいつか町を出ていくことを夢見るような普通の少女でもあり、真実を見抜く神様の代弁者的な存在でもあるのだろう。
暴走族に物怖じしない住人たちの姿が伏線と言えば伏線だったが、主人公は彼らの反撃にあう。このあたりはアメリカ人の自治・自衛の意識の高さを感じる。主人公自身はそんなにひどいことはしていないので少し可哀想だが、やりたい放題暴れていた皆のリーダーなので自業自得だ。この映画には道徳的、宗教的な教訓じみたメッセージが感じられる。どうやら、儲かるからと喜んで悪者たちに酒を提供していたバーの人間たちも、因果応報の対象と見なされているようだ。
前半はただ町で騒いでいるだけのシーンが続いて冗長に感じたが、様々な展開が生じる終盤は面白かった。主人公が偽物の象徴を返還し、悔悛の姿勢を示す控えめなエンディングは、同時に主人公の恋心の表明にもなっていて良く出来ている。グッと来た。
ところで、この映画の存在自体は昔から知っていたのだが、まさかタイトルの読みが「あばれもの」だったとは知らなかった。ついさっき知って軽くショックを受けている。ずっと「らんぼうもの」と読んでいた。
スタッフ/キャスト
監督 ラズロ・ベネディク
原作 「Cyclists' Raid」 Frank Rooney
製作 スタンリー・クレイマー
出演 マーロン・ブランド/メアリー・マーフィ/ロバート・キース/リー・マーヴィン/ジョン・ブラウン/ウィル・ライト