★★★★☆
あらすじ
主人公らが所属していたボクシングジムに立ち退きの話が持ち上がり、二人のプロボクサーに転機が訪れる。
感想
後篇最初の山場は、主人公がボクシングを始めるきっかけとなった、自分を裏切った男との対戦だ。主人公は前篇のラストの試合で見せていたような、ボクシング関係者が見たら大激怒しそうな戦いぶりを見せる。
だがまともに戦ったら勝てない相手に対し、あらゆる手を使って勝機を掴もうとする主人公の姿勢には、すごいなと素直に感心してしまった。反則技を繰り出すのは、決してあきらめて自暴自棄になったわけではなく、勝つためにやっている。喧嘩もきっとこういうことができる人間が強いのだろう。
一方の素質はあるが気弱なために伸び悩んでいた韓国系の男は、ボクサーとしての目標を見つけてある決断をする。力強くも辛い決断をした彼が、主人公に宛てて書いた手紙には泣きそうになってしまった。他のスポーツだとそうでもないのに、ボクシングだとここまでの決意がなければ無理に思えてしまうから、ボクシングはただのスポーツ、と言ってはいけないような何かがあるような気がしてしまう。
クライマックスは主人公ら二人の直接対決だ。試合が始まるまでは両者が一切目を合わせなかったのが印象的だった。気持ちが揺らがないようにするためだったのか。そしてゴングが鳴って始まった戦いは、ラウンドを重ねるにつれて次第にボクシングではない何かへと変化していく。激しいパンチの応酬を続ける二人の姿は、もはや勝ち負けのために戦っているのではないような、神々しささえ感じてしまった。
ちょっと激しすぎるのではと思うような結末が待っていたが、「つながる」ってこれくらい命がけのものなのだ、と見せつけられたような気がして圧倒される。そしてラストの主人公の、で、お前はこんな暗い世の中でどう生きていくのだ?と問いかけるようにこちらを見つめる視線が、いつまでも心に残る。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/編集 岸善幸
原作 あゝ、荒野 (角川文庫)
製作 杉田浩光/佐藤順子
出演 菅田将暉/ヤン・イクチュン/木下あかり/ユースケ・サンタマリア/でんでん/モロ師岡/木村多江/高橋和也/山田裕貴/小林且弥/川口覚/前原滉/今野杏南/山本浩司/鈴木卓爾
音楽 岩代太郎
あゝ、荒野 シリーズ(R15+) | 映画 | 無料動画GYAO!
関連する作品