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「教誨師」 2018

教誨師

★★★★☆

 

あらすじ

 死刑囚たちと彼らの心の平安や改心を促すための教誨師の男との面会の様子。タイトルの読みは「きょうかいし」。

 

感想

 主人公である教誨師と複数の死刑囚との1対1の会話の様子が延々と映し出される。こんなシチュエーションがずっと続くと息苦しくなってしまいそうだと思っていると、ちょうど良いタイミングで少し別のシーンが入ってきたりして、ちゃんと場が持つように構成されているのは上手かった。

 

 死刑囚たちは皆一筋縄ではいかない連中だ。何も喋らない者、逆に延々と喋りつづける者、懐柔しようとする者、論破しようとしてくる者など様々なタイプがいる。この面倒くささはさすが死刑囚だけのことはあると妙なところで感心してしまった。こんな人たちを相手にしなければいけない教誨師という仕事は、とてつもなくストレスが大きそうだ。しかもタイプの違う曲者たちを一日の間に次々と相手にしなければいけないなんて、自分なら途中で心が折れて絶対逃げ帰ってしまうはずだ。この仕事はボランティアという事なのでなおさらだ。

 

 

 登場する6人の死刑囚の中で特に印象的だったのは、やはり主人公を言い負かそうと挑むように話を仕掛けてくる玉置玲央演じる若い男だ。若い人間にありがちな自分が正しいと己惚れて、誰彼構わず見下し馬鹿にする。確かに彼の言う事は世の中の欺瞞を炙り出していて、ぐうの音も出ないことが多々あり、主人公は苦しい状況に何度も追い込まれる。ただこの彼には彼なりの世の中を正したい、より良くしたいという思いはあったわけで、そこに救いの糸口があった。一番困るのは、この映画には登場しないが、死刑になりたいから罪を犯したという人が現れた時なのだろう。

 

 そして他の死刑囚たちも皆それぞれ心に残る人たちばかりだった。一見すると自分勝手だったり陽気に振る舞っている人でも、何度か対話を続けているうちに、その心の底には寂しさだったり恐怖心が潜んでいることが分かってきたりする。本当は善良なのに無学や貧しさから犯罪を犯してしまった人もいて、人生というものについて色々と思いを馳せてしまった。

 

 なかなか主人公の思い通りに話が進まない様子や、主人公や聖書の話から誤った解釈をしてしまい、その方向性で気持ちがすっきりとしてしまった人が出てきたりするのを見ていると、教誨師の仕事の空しさや不毛さを感じてしまう。だがそれでもあきらめることなく、真摯に対話を続ける主人公の誠実な姿を見ていたら、段々と目頭が熱くなってきた。どこのシーンが良かったからというわけではないのだが、こんなつらい仕事から逃げ出すことなく、死刑囚の話を真正面から受け止め続ける姿に胸が打たれてしまうのだろう。深い余韻に浸れる映画だった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/原案 佐向大

 

製作総指揮 狩野洋平/押田興将

 

製作総指揮/出演 大杉漣

 

出演 杉田雷麟/玉置玲央/烏丸せつこ/五頭岳夫/小川登/古舘寛治/光石研/青木柚/藤野大輝

 

教誨師

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教誨師 (映画) - Wikipedia

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登場する作品

「ザアカイさん」 女子パウロ会

 

 

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