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「青が破れる」 2016

青が破れる (河出文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 ボクサーの男は、難病で余命いくばくもない恋人の見舞いに行く友人に付き合わされる。他2編。

 

感想

 表題作は、難病の恋人を持つ友人の見舞いに主人公が付き合わされたことから始まる物語。ボクサーでもある主人公の朴訥というか不器用な性格を表しているような文章が面白い。でもこれはもともとの性格というよりも、彼がこうあるべきだと考える理想の姿の振る舞いをしようとしているのかもしれない。

 

いや、思考じゃない。不安だ。思考が不安と一体になっている自分がこわい。どうしておれの思考は、常に不安を呼び起こす?

単行本 p14

 

 考えることは大事なのだが、考えているようでは駄目なのでは?と思ってしまうことがある。動物は考えることなく本能のまま的確に動いているのに、自分は動く前にいちいち考え、その上わざわざ不安まで呼び起こしてしまっている。考える必要もなく自然と動けるようになりたい。ボクサーが目指すのもそこだろう。

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 主人公や他の誰かを介さないとまともに話すことも出来ない友人カップルの姿がもどかしく、そして悲しかった。二人の時間は残りわずかしかないのだから大切にするべきなのに、お互いに気を使い、考えすぎてしまって素直に一緒にいることが出来ない。

 

 残りの2編はそれぞれ毛並みが違ったものになっており、著者がセンスだけで書いているのではなく、ちゃんとしっかりとした技術があることを教えてくれる。なかでも「脱皮ボーイ」は予想外の方向に話が進み、ラストはなんだそれ?と笑ってしまった。

 

 

 

著者

町屋良平

 

 

 

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