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「閉鎖病棟 -それぞれの朝-」 2019

閉鎖病棟-それぞれの朝-

★★★☆☆

 

あらすじ

 死刑執行されるも蘇生し閉鎖病棟に送られた男と、入院患者たちの群像劇。

 

感想

 まず死刑執行しても死ななかった男はその後生き続けることが出来るという設定が不思議だ。現在では失敗することはないのだろうが、これは明治時代に実際にあった出来事を参考にしているようだ。ただ死刑に失敗したのなら普通にもう一度やり直せばいいだけのような気がしてしまうのだが、なるべく苦しまずに死なせるつもりが苦しませてしまったので、もう一度同じことをするのは気の毒だということなのだろうか。

石鐵県死刑囚蘇生事件 - Wikipedia

 

 そうやって生き残った元死刑囚の主人公が、送り込まれた閉鎖病棟で他の入院患者と交流する様子が描かれる。この施設で意外だったのは、案外自由があるということだ。病棟が男女別じゃないのは普通なのかもしれないが、病院関係者が部屋を出入りするたびにいちいち施錠するような厳重な隔離体制を取っているように見える割には、患者たちは庭やら玄関やらを自由に歩き回っている。これだと簡単に外に出られてしまって全然「閉鎖」病棟ではないのでは?と思ってしまったが、どうなっているのだろうのだろうか。考えられるのは刑務所のように高い壁で下界と隔離しているということだが、そんな映像が示されることはなく、ずっと気になってしまった。そこはちゃんと分りやすい説明をして欲しかった。

 

 そして元死刑囚の主人公が当然のようにいい人の設定なのは違和感があるし、その周囲の人々もいい人ばかりで、優しい世界になり過ぎているのも気になった。確かに患者の中には悪い人も普通の人もいるのでそれなりにバランスはとれているのかもしれないが、なんで彼らがそんなにいい人なのかが分からない。優しすぎるから病んでしまうところはあるのかもしれないが、もうちょっと腑に落ちる説明が欲しかった。

 

 

 その他の入院患者たちは、いかにも閉鎖病棟の人々という感じだ。ただここに登場する患者たちに似たような人は、日常生活でもよく見かけるような気がする。小松菜奈演じる少女を迎えに来たヤバそうな義理の父親がそれをよく示唆している。彼と患者たちを分けているものは何なのだろうと考えてしまった。そして彼とは違って、きっちりと病院におさまっている患者たちは幸せなのか不幸なのか。

 

 物語は、閉鎖病棟の優しい世界を描き続ける。ずっとこの調子だったらしんどかったが、途中で事件が起きて少し物語に起伏が生まれたので、何とか持ちこたえることが出来た。ただそれでも全体的に辛気くさすぎる。生きる希望が再び湧いた主人公の姿で終わるラストもわざとらしかった。

 

 ただ主人公を演じた笑福亭鶴瓶は、時々クサく感じることもあったが概ねいい演技をしていた。特に許可をもらって外出し、内緒で久々に酒を飲むシーンの演技は、主人公の心情がよく表れていて印象的だった。

 

 それからこの映画の原作小説のタイトルは「閉鎖病棟」で、それだけだと陰気な感じがして引きが弱いだろうと「それぞれの朝」というサブタイトルを付けたのだと思うが、逆に陰気さが倍増してしまって失敗しているような気がする。あまり食指が伸びないタイトルだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 平山秀幸

 

原作 閉鎖病棟 (新潮文庫)

 

出演 笑福亭鶴瓶/綾野剛/小松菜奈/坂東龍汰/平岩紙/綾田俊樹/森下能幸/水澤紳吾/駒木根隆介/大窪人衛/北村早樹子/大方斐紗子/村木仁/片岡礼子/山中崇/根岸季衣/ベンガル/高橋和也/木野花/渋川清彦/小林聡美/佐藤もみじ

 

音楽 安川午朗

 

閉鎖病棟 Closed Ward - Wikipedia

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