★★★☆☆
あらすじ
恵まれない環境で育ち、少年院で知り合った三人の若者が、犯罪者を狙った窃盗を繰り返す。
感想
表社会でまともに生きることが出来ない境遇に育った若者たちが、生きるために必死にもがく物語。一般人相手ではなく社会悪から奪うところが彼らの矜持で、ねずみ小僧みたいなものだが、奪った金は自分たちのために使う。彼らにはそうせざるを得ない理由がある。
ただ主役の三人があまり魅力的に描かれておらず、あまり感情移入が出来ないのが残念だ。ムードメーカー役の加藤諒は滑り気味だし、まとめ役の高杉真宙は一本調子だし、残りの渡辺大知はただいるだけ。彼らのバックグラウンドを説明するシーンになると急にだらだらと語り出して真面目な雰囲気になってしまい、一気につまらなくなるのも辛かった。
彼らが一発逆転を狙ってターゲットにしたMIYAVI演じる裏社会の超大物も、あまり怖そうには感じられなかった。明らかにヤバそうなやつよりも、一見普通に見えるやつの方が実はヤバいというキャラをやりたかったのだと思うが、あまりに普通すぎて本当に大物なのか?と疑ってしまった。変態ぶりは見せていたが、途中で一度くらいは凄みを垣間見せて欲しかった。クライマックスで実際に戦った時に、その強さを初めて知り驚いたくらいだ。この映画は全体的にミスキャスト感がある。
それからたった一度店で接客しただけのキャバクラの女が、主人公らに異常に協力的なのもよく分からなかった。
そんな中で目立っていたのは、裏社会組織の番頭を演じた金子ノブアキだ。主人公たちの境遇もそうだがメッセージ性を強く感じる映画で、彼が部下に飛ばす檄の言葉も最期の叫びも、まるで観客に訴えかけているかのようで心に響いた。彼も主人公らと同様に今の社会システムが生んだ可哀想な人物だといえる。
しかし今までこういう物語は、社会の片隅で人知れず起きていることといった印象だったが、今ではずいぶんと身近に感じられるようになってしまった。最後のわざとらしい町の喧騒はそれを示しているのだろう。まだ何も感じていない世襲議員たちがそれに気づく頃には、日本は相当ヤバいことになっているかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 入江悠
出演 高杉真宙/加藤諒/渡辺大知/林遣都/伊東蒼/山本舞香/芦那すみれ/勝矢/般若/菅原健/斉藤祥太/斉藤慶太/金子ノブアキ/篠田麻里子/MIYAVI