★★★☆☆
あらすじ
大正時代。公爵家の青年は、幼馴染の華族の女性に思いを寄せられ、自分も気になっていたが素直になれず、冷淡な態度を取っていた。
妻夫木聡、竹内結子ら出演、行定勲監督。三島由紀夫原作。150分。妻夫木聡、竹内結子ら出演、行定勲監督。三島由紀夫の同名小説が原作。150分。
感想
公爵家の一人息子が主人公だ。幼馴染の女性からの好意に気づき、自分も気になっているのにもかかわらず、裏腹な態度をとってしまう。そんな二人の恋愛が、貴族階級のみやびな雰囲気の中で展開される。優雅な映像は見応えがある。
主人公は、彼女に嫌われそうな手紙を送りつけたり、友人とくっつけようとしたりする。祖母や父親などいろんな人に、まだ子供だからと言われてしまっていたが、まさに好きな女の子をからかう男児のようだ。そうすることでしか自分の気持ちを表現できない。
だがそんな態度を彼女に見透かされ、笑われてしまったことで主人公の気持ちは意固地になる。その頑なさもまた幼稚といえるかもしれない。彼が心を固くしている間に、彼女の結婚が決まってしまった。普通ならこれで未熟な恋は終わりだが、主人公はようやく自分の気持ちに正直になり、ここから彼女に迫ろうとする。あまりに遅すぎる。だがこの強引さには、貴族特有の傲慢さを感じてしまう。
侍女の計らいで、主人公は彼女の結婚前に一度だけ会う約束をするが、その関係は一度きりでは終わらず、ズルズルと続いてしまう。ここまでは密命を受けていた次女の思うつぼだったのかと思ったが、若い二人が勢いに乗って暴走してしまった。もはや誰にも止められない。しかし、二人がやっていることは皇族のメンツが丸潰れになるとんでもないもので、不敬すぎてゾクゾクする。これも彼らを燃え上がらせた一因なのかもしれない。
とはいえ、いつまでもそんなことが続くわけがない。両家の立場すら危うくする不祥事に、大人たちが動き出して彼らの関係は終わる。そして悲劇へと進んでいくのだが、急に主人公が怪しい咳をするようになったりして、フラグの立て方があからさまでスッと冷めてしまった。それまでは丁寧な描写が続いていたのに、急に雑になった。
そしてフラグ通りの悲しい結末が訪れた。 二人が会えなくなったら、死んでしまうのは彼女ではなく自分だ、と暗示していた序盤の夢のようになる。お互い生きているのにもう二度と会えない、と嘆きながら残りの人生を送るのはつらい。しかし、この結果は会えなくてもあきらめがつくので、決して最悪の結果ではないような気もする。バッドエンドの中ではハッピーエンドのほうだろう。
二人が素直だったらあっさりと結ばれ、ハッピーエンドになっていた物語だ。それを妨げたのは主人公の子供っぽさかと思っていたが、もしかしたら二人の幼い頃の約束だったのかもしれない。どんなことがあっても最後には結ばれるのだと信じて、主人公は高をくくって何もしなかったような気もする。そう考えると、あれは美しい約束ではなく、呪縛となってしまったのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督 行定勲
脚本 伊藤ちひろ/佐藤信介
原作 春の雪 (新潮文庫)
出演
竹内結子/高岡蒼佑/及川光博/榎木孝明/真野響子/石丸謙二郎/宮崎美子/大楠道代/岸田今日子/田口トモロヲ/山本圭/高畑淳子/中原丈雄/石橋蓮司/若尾文子/志田未来/徳井優
音楽 岩代太郎
