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「さよなら渓谷」 2013

さよなら渓谷

★★★☆☆

 

あらすじ

 幼児殺害事件の容疑者として世間の注目を集めていた母親を取材するため、アパートに詰めていた雑誌記者の男は、隣人の地味な夫婦に目を留めるようになる。

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 真木よう子、大森南朋、井浦新ら出演、大森立嗣監督。吉田修一原作。116分。

 

感想

 世間の注目を集める事件ではなく、その隣人で、ひっそりと生きていた夫婦の過去が明らかになっていく物語だ。普段なら視界にも入らないが、隣人が偶然事件を起こしたことにより、図らずも目を引くことになった。巧みな物語の導入だ。

 

 破れかぶれになった容疑者に関係があったと名指しされたことで、まず男が注目を集める。雑誌記者である主人公は、取材を進めるうちに、彼が大学時代に不祥事を起こしていたことを知る。そんな不祥事を知ってしまったら、彼の妻は知っているのだろうか、どう思っているのだろうか、などと興味を持つのは自然だろう。後ろ暗いものがある彼らが仲睦まじそうなのに対して、何も悪いことはしていない主人公が、妻とは険悪な関係になっているのも皮肉だ。

 

 

 そして二人の過去が明らかになっていく。原作を読んであらすじは知っていたので、映画単体としてどうかは判断しづらいが、男が女の居場所をどうやって突き止めたのかが気になったり、主人公が二人の関係に気づいたのは勘が良すぎるように思えたりもした。ただ、二人の関係を知ると、そんな人生もあるのかと、世界の深淵を覗いたような気分になる。

 

 贖罪のために生きる男と、簡単にはそれを受容しない女の関係は、どこか宗教的な物語を思わせる。一緒に過ごすうちに一般的な感情が生まれつつあったが、心の何処かでは、二人の関係が「あってはならないもの」と互いに感じていたのだろう。だからこそ女は事件をきっかけに男を突き放そうとし、男は黙ってそれを受け入れようとした。そして、これで二人の関係にけりが付いたと感じるのも分かるような気がする。

 

 二人の複雑な関係は、分からないようで分かるような、分かるようで分からないような、なんとも言い難い気持ちにさせられる。ただ、一つの関係が終わったとしても、また新たに関係を始めればいいではないか、という気はしてしまう。女が落としたサンダルを探し求めて、何度も渓谷にやって来てしまう男の姿が悲しい。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 大森立嗣

 

脚本 高田亮

 

原作

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出演 真木よう子/大西信満/大森南朋/鈴木杏/鶴田真由/井浦新/新井浩文/木下ほうか/三浦誠己/池内万作/木野花/瀧内公美

 

さよなら渓谷

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さよなら渓谷 - Wikipedia

 

 

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