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「平賀源内「非常の人」の生涯 」 2020

平賀源内: 「非常の人」の生涯 (949) (平凡社新書)

★★★☆☆

 

内容

 江戸時代の才人、平賀源内の伝記。

 

感想

 「土用の丑の日」のキャッチコピーを考えたとか、エレキテルだとか、平賀源内という人の名前は色々なところで聞く。多才な人だったというのは知っていたが、じゃあ結局、主に何やってる方?と問われればよく分からない人だった。この本で、もともと彼は「本草学」の人だったというのを、初めて知った。

 

 中国医学の薬の原材料の研究から始まり、やがては現在の博物学へとつながる本草学。源内は、外国から入ってきた知識や日本各地の様々な自然物の知識を活かすことで色んなアイデアを生み出していった。たくさんのインプットがあったからこそ、多彩なアウトプットをすることが出来たというのは、納得である。

 

 

 ただ気になるのは、火浣布や金唐革紙等の開発はするものの、実用化・製品化しなかったものが多いということだ。いつも途中で人に任せて頓挫してしまっている。すぐに関心が他に移ってしまう飽きっぽい性格ということもあるのだろうが、ここまでやればこの先は誰だってできるだろう、自分にしか出来ないことではない、という思いがあったような気もする。

 

 自分は他の誰にも出来ないことをやろうという気持ちが強かったのではないだろうか。ただ、この先は誰でも出来るだろう、と他人に任せる時の見極めが誤っていたということにはなるが。でもこれは、凡人の事が理解できない天才にはありがちな話だ。

 

 その他、戯作なども書いて、江戸の町の有名人となった源内。晩年は人に当たり散らしたりして乱心気味になったそうで、最後は殺人を犯して獄死という寂しい結末だった。これは才能が枯れてしまったというやつなのだろうか。かつての輝きを失ってしまった自分に対する苛立ちや焦りを、他人にぶつけてしまったような気がする。 

 

 こうやって彼の生涯を振り返って見ると、色々と手を出してそれなりの功績を残したが、これといった大きな功績は残せなかった器用貧乏の人だった、という印象は否めない。このうちのどれか一つでも全身全霊で取り組んでいたら、と思わないでもないが、そういうことが出来なそうな気の多い性格だったということも伝わってくる。

 

 ただ「解体新書」の杉田玄白に代表されるように、彼の周りの友人や弟子、関係者には歴史に残る功績をあげた人も多い。才人が近くにいれば、周りは大いに刺激される。これが彼の最大の功績と言えるのかもしれない。

 

著者

新戸雅章 

 

平賀源内 (平凡社新書0949)

平賀源内 (平凡社新書0949)

  • 作者:新戸 雅章
  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: Kindle版
 

 

 

登場する作品

新装版 解体新書 (講談社学術文庫)

[自由訳]平賀源内作 風流志道軒傳(風流志道軒)」

神霊矢口渡

太平記 全6巻: 美装ケースセット (岩波文庫)

 「国訳本草綱目〈第1冊〉 (1973年)(本草綱目)」

「クリュードベック」 レンベルト・ドドエンス(ドドネウス)

「紅毛本草」

阿蘭陀本草和解 [1] (国会図書館コレクション)

動物誌 (上) (岩波文庫)

プリニウスの博物誌〈第1巻~第6巻〉

「コスモス」 アレクサンダー・フォン・フンボルト

三楠実録

「和蘭文訳」 青木昆陽

「和蘭文字略考」 青木昆陽

鳥獣虫魚図譜 (荒俣コレクション復刻シリーズ―博物画の至宝)

「阿蘭陀禽獣虫魚図和解」 野呂元丈

「厚生新編」 馬場佐十郎

「衆麟図」 松平頼恭

「衆禽画譜」

「衆芳画譜」

「有馬紀行」 平賀源内/安芸文江/渡辺桃源

平賀源内 (朝日選書)」 芳賀徹

「ターヘル・アナトミア」 ヨハン・アダム・クルムス

蘭学事始

「紀州物産志」 平賀源内

新書875江戸の科学者 (平凡社新書)

「聞くまゝの記」 木村黙老

「増補高松藩記」

放屁論後編 (風々齋文庫)

「飛だ噂の評」 風来山人(平賀源内)

「物類品隲(ぶつるいひんしつ)」 平賀源内

天工開物 (東洋文庫 (130))

「蕃椒譜」 平賀源内

日本博物学史 (講談社学術文庫)

東方見聞録1 (平凡社ライブラリー)

竹取物語(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫)

「火浣布説」 平賀源内

火浣布略説 (国立図書館コレクション)

「紅毛花譜」

「紅毛禽獣魚介虫図」

「紅毛談(オランダばなし)」 後藤梨春

紅毛雑話/蘭説弁惑 (生活の古典双書)」所収「紅毛雑話」

江戸科学古典叢書〈11〉エレキテル全書.阿蘭陀始制エレキテル究理原.遠西奇器述.和蘭奇器 (1978年)

「日本創製寒熱昇降記」 平賀源内

西洋事物起原 (1) (岩波文庫)

「平賀鳩渓実記」 櫟斎老人

平賀源内 (人物叢書 新装版) 城福勇

新装版 故郷忘じがたく候 (文春文庫)

江戸の想像力―18世紀のメディアと表徴 (ちくま学芸文庫)

将軍と側用人の政治―新書・江戸時代〈1〉 (講談社現代新書)

江戸の幾何空間」所収「物産・商品・言語」

雨月物語 (岩波文庫)

古事記伝(1) (国立図書館コレクション)

寝惚先生文集・狂歌才蔵集・四方のあか (新 日本古典文学大系)」所収「寝惚先生文集」

「根無草後編」  風来山人(平賀源内)

「根南志具佐」 天竺浪人(平賀源内)

ガリヴァー旅行記 (岩波文庫)

源氏物語 01 桐壺

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「金曾木」 太田南畝

長枕褥合戦 (風々齋文庫)

和漢三才図会 (1) (東洋文庫 (447))

田舎荘子・当世下手談義・当世穴さがし (新 日本古典文学大系)」所収「当世下手談義」

浮世床 (岩波文庫)

東海道中膝栗毛 上 (岩波文庫 黄 227-1)

浄瑠璃物語 (風々齋文庫)

現代語訳 曾根崎心中 (河出文庫)

「風来六部集」

「天狗髑髏鑒定縁起」  風来山人(平賀源内)

痿陰隠逸伝 (風々齋文庫)

侍ブラス 風来山人(金管九重奏+マリンバ) / スーパーキッズレコード」所収「漱石膏」

「飛花落葉」 太田南畝

「和蘭天説」 司馬江漢

「輿地全図」 司馬江漢

「西洋画談」 司馬江漢

「画法綱領」 佐竹曙山

「暦象新書」 志筑忠雄

「江戸男色細身菊の園」 水虎山人(平賀源内)

「男色評判記 男色品定」 水虎山人(平賀源内)

「蔵志」 山脇東洋

新訂 江戸名所図会〈1〉天枢之部 ちくま学芸文庫

「平賀実記」 斎藤月岑

「驪山比翼塚」 森島中良

若きウェルテルの悩み (岩波文庫)

ファウスト

 

 

登場する人物

平賀源内

 

 

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