★★★☆☆
あらすじ
軍需工場で働く女子挺身隊員たち。高い生産目標の達成のために一丸となる。ちなみに主演の矢口陽子は、のちに監督の黒澤明と結婚した。
感想
戦時中に作られた映画ということで、明らかな国威発揚映画。序盤は、ほとんど北朝鮮と変わらないような、洗脳されてるような人々を観ていたら、なんだか吐き気を催すような気持ちの悪さがあった。
こういうのを見ていると、未だに軍国主義に憧れている人たちはどこに魅力を感じてるのだろうと訝しく思ってしまう。そもそも彼らはそんな体制のどこに自分はいるつもりなのだろう。政治家は国の上層部、特権階級にいると思っているだろうからまだ分かるが、普通の庶民は体制が変わったら、マインドコントロールされた庶民になるのだが、それがいいのだろうか。理解できない。まあそこまで深く考えてないのかもしれないが。
とかいいながら、映画の中の乙女たちは充実した顔をしている。きっと誰かが洗脳されてて可哀想ですね、と本人たちに言っても、きっと何の疑いもなく、洗脳されてないし、幸せですよ、と返しそうだ。やる事が決められていて、他の事に思い悩む必要がないので、ある意味では現在よりも満ち足りているのかもしれない。
ただ気分の悪さを感じるのは序盤のみで、それ以降はあまりお国のため、みたいな描写はなくなり、少女たちが生産目標達成のために様々な困難を乗り越えていく姿を描く物語となっていく。優勝を目指すスポーツチームやプロジェクト達成に全力を挙げる部署の物語と同じで、けがを隠してプレーを続ける選手がいたり、家庭の事情を顧みず仕事に打ち込むメンバーがいる感じ。そしてそれがドラマを生んでいく。
最初はモチベーションが高く想定を上回る成績をおさめながらも、長続きせず中だるみがあり、士気を高めるために様々な施策を打ったりと、工場の生産管理をしている人はより楽しめる内容かもしれない。働いているのが少女たちなので幼さがまだ残っており、士気が下がった時のあからさまな無気力ぶりには思わず笑ってしまった。
少女たちの健気さがよく表れている女子映画で悪くない映画なのだが、登場人物たちが全員善良なのが不満。そんなわけがない。ただ国威発揚映画なので、悪い日本人がいては問題があるということなのだろう。
しかし、悪い人が全く出てこないとディストピ感が出てくるのは発見かも。個性が死に絶え、全員が完全に洗脳されたディストピア世界が確立したよう見えるからか。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
出演 矢口陽子/入江たか子/志村喬