★★★☆☆
あらすじ
1950年代のニューヨーク、コニーアイランドで、再婚した夫と共に遊園地で働き、そこに暮らす女。夫の娘が転がり込んできたことで女の生活は微妙に歯車が狂いだす。101分。
感想
働いている遊園地の元見世物小屋で、自身の連れ子と再婚した夫と暮らす主人公。元女優の彼女は、刺激のない暮らしの中で歳を重ねていくことに嫌気がさしている。趣味の合わない夫と火遊びに夢中になっている子供との生活は、確かに消耗しそうだ。
しかし、主人公の子供は清々しいほど可愛げがない。そして何かにつけて火を放つコメディ担当のような立ち位置なのだが、これはこれで彼の心の闇を表しているということなのだろう。すべてを燃やし尽くして初めからやり直したい、というような。ある意味で皆の心境を表していると言えるのかもしれない。
潤いのない生活の中で、ふとしたきっかけからジャスティン・ティンバーレイク演じるライフガードの男と不倫をするようになった主人公。気が滅入るような生活から抜け出すチャンスと、男とどこかに逃れられないかと考えている。ところがその男が、夫の娘、義理の娘に気持ちが向き始めていることに気付いて焦り始める。それにしても、この不倫相手の口説き文句が「パリかボラボラ島で一緒に暮らそう」のワンパターンで笑える。男は単純だ。
物語は、焦った主人公がとっさの判断で取った行動によって、後味の悪い結末を迎えることになる。ただ、主人公は不倫をした時も相手に既婚であることを正直に打ち明けているし、義理の娘のピンチを知った時には取り乱すほど慌てていたので、根は善良な人間なのだろう。まさに魔がさしたとしか言いようのない行動だったといえる。
そんなわけだから、彼女の心の中ではモヤモヤとしたものがきっとあったはずなのに、そんな状況を楽しむように生き生きと輝き出したように見えるのが興味深い。メロドラマ的状況になると燃えるというか。まさに女優の面目躍如といったところだろう。女優的瞬間を楽しんで演技している。
初めての不倫の時もそうだが、主人公がドラマチックな瞬間に酔っているときは、まるでスポットライトのように強い光が彼女に注ぐ演出が印象的だった。義理の娘にもそんな状況の時は強く青い光が当てられているので、女は皆女優、と言っているのかもしれない。
映画は全体としては笑いが薄く、女が精神的に参っていく描写が大部分を占めるので、重苦しく気づまりな内容になってしまっている。その分、主演のケイト・ウィンスレットの繊細な演技巧者ぶりは堪能できるのだが。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
出演
ジャスティン・ティンバーレイク/ジュノー・テンプル/ジム・ベルーシ/デビ・メイザー/トニー・シリコ/マックス・カセラ/デヴィッド・クラムホルツ