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「ジャクソンひとり」 2022

ジャクソンひとり

★★★☆☆

 

あらすじ

 スポーツトレーナーとして働くブラックミックスの男は、自分らしき人物が映った猥褻な動画が流布していることに気付く。

 

感想

 ブラックミックスの4人の男が、自分と疑われるような見た目の男が映った猥褻動画について、対策を練るために集まる。日本では分かりやすい外見で記号的に処理されてしまいがちな彼らが、それらを逆手にとった行動を開始する。

 

 ただ文章の視点が、主人公から仲間の三人、さらには他の人物まで次々と移っていくので、うっかりしていると誰の話をしているのかが分からなくなって混乱してくる。だがこれは狙ってやっているような気もする。外見で判断するなら間違えないかもしれないが、文章だとあなたもブラックミックスも変わらないだろうという皮肉にも感じた。

 

 

 この混乱に加えて、主人公らの意図も分かりづらいので困惑が増す。彼らの中にはネット配信をしたり、リアリティショーに出演したりする者もいる。だから単純に皆が動画の人物と疑われて迷惑しているわけでなく、逆に自分がその人物であることにして注目を集めたいと考える者もいて、結局彼らは何をどうしたいのだか、話の方向性が見えづらかった。

 

 そして復讐らしきことを実行に移すのだが、もはやただ眺めるような気分で粛々と読み進めるだけだった。結局はふんわりと、世間に対して復讐をしたかっただけのような気がする。ただ終盤は、ブラックミックスに限らず普遍的な、自分とは何かというアイデンティティの話へと発展しているようにも見えた。

 

 メインの物語はイマイチだったが、深刻になりそうな話題を重々しく受け取るのではなく、飄々と、だけどちゃんと芯のある感じで対応していく主人公らの姿は新鮮だった。

 

著者

安堂ホセ

 

ジャクソンひとり

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