★★★★☆
あらすじ
江戸城大奥内での陰謀に巻き込まれる形で、徳川家光の乳母となったのちの春日局、おふく。
感想
後継ぎに恵まれないことが秀忠の第2代将軍就任の障害となっていたため、焦った大奥の女たちが陰謀を企てる。そこにうってつけの血筋の赤子を産んだ、のちの春日局である主人公がいたというのは、あまりに都合が良すぎるのだが、なかなか面白い歴史改変だ。
しかし、そのきっかけとなった家康のやりたい放題ぶりは、まさに天下人といったところで、楽しそうだった。まるでVシネみたいな展開もあるのだが、きっとこんな事を日常茶飯事でやっていたのだろうなと想像してしまう。これくらいのバイタリティーがないと、天下なんて取れないのだろう。好色ぶりを見せながらも、しっかりと将軍としての風格も示した若山富三郎のメリハリの利いた演技が見事だった。
その後、秀忠に本当の男児が生まれて、主人公と大奥の女たちとの間に確執が生まれる。女たちは秀忠を将軍職に就けるためになりふり構わずやったのだから、もうそのままにしておけばいいのに、と思ってしまった。彼女たちの中で正当な血を引く者に跡を継がせたい、という新たな欲が出てしまったという事か。それから大奥の事とは言え、秀忠の存在感が薄かったのも解せなかった。
この女たちの戦いに勝利して、主人公は権力を握っていく、という話なのだが、あまり主人公の凄みは伝わってこない。確かにお役御免にされそうになった時、ここが勝負時とばかりにしたたかさは見せたが、でもそれだけだ。ただ運が良かっただけ、という印象の方が強い。
主人公は、気抜けしてしまった旦那を捨てて江戸に出たりと、気の強さは垣間見せていたわけだから、もっと野心を前面に出して、大奥の中でバチバチと火花の散るような権力闘争を見せて欲しかった。もっと言えば、陰謀はすべて主人公が仕掛け、赤ん坊も徳川家とは無縁の子供だったら、もっと彼女の凄みが感じられたかもしれない。
細かい所を言えば色々と気になる点はあるのだが、豪華なセットや衣装、そして草笛光子と淡路恵子の、世の酸いも甘いも噛み分けたようなベテラン女性を演じた演技もよくて、見ごたえのある映画にはなっている。
スタッフ/キャスト
監督 中島貞夫
出演 十朱幸代/名取裕子/鳥越マリ/草笛光子/吉川十和子/原田大二郎/本田博太郎/淡路恵子/長門裕之/若山富三郎/堂本直宏(堂本剛)
撮影 木村大作
登場する人物
春日局/徳川秀忠/お江与(崇源院)/小早川秀秋/稲葉正成/大久保忠隣/本多正信/徳川家康