★★★☆☆
あらすじ
日本最大のヤクザ組織の後継者争いで、劣勢の候補者の支援に乗り出した主人公である北陸の女帝。激しさを増す争いの中で、やがて自らの命まで狙われるようになる。
シリーズ第9作。114分。
感想
今回の主人公は、争いの中心にいるのではなく、その裏で糸を引くフィクサーのような存在だ。北陸を手中に収め、大金を稼ぎ、かなりの余裕を感じる。メインは主人公の組の話ではないため、ほとんど彼女の組の組織の様子は描かれない。
そんな主人公の娘を演じるのは、工藤静香だ。あの独特の声となんとも言えない演技で、映画の中に別の空気感を漂わせている。そして、彼女が演じるこの娘がこの映画最大のヒールと言っていいのかもしれない。
好きな男にちょっかいをかけられたのに、素直になれずに母親にあいつを殺せと訴えたことから、主人公はややこしい状況に巻き込まれてしまった。そのくせ、混乱と誤解で血なまぐさい事件が頻発するようになると、あの人を本当に殺しちゃったの?と母親に聞く始末。悪意がないだけにタチが悪い。親の顔が見てみたくなる。
正直、物語自体はよくある組の後継者争いの話でまずまずの出来だが、出ているキャラクターたちが面白かった。妙にねちっこい演技をしつこく続ける中尾彬や、なぜかテカテカの黒い衣装を身にまとい、橋の上に佇むかたせ梨乃。そして勿論、主人公の岩下志麻も、そのセリフ、そんな言い方する?みたいなシーンがあって、思わず嬉しくなってしまった。彼らの存在感や演技がこのシリーズの醍醐味なんだなと、改めて気づかせてくれる。
そんな風に映画を堪能して、最後は主人公の見せ場だなと待っていたのに、そのまま終わってしまった。確かにいかにも表に出ないフィクサーらしくはあったのだが、啖呵を切るとか何か見せ場が欲しかった。それが醍醐味なのに。消化不良感が残った。
スタッフ/キャスト
監督 中島貞夫
出演 岩下志麻/かたせ梨乃/工藤静香/原田龍二/羽場裕一/原田大二郎/及川麻衣/川島なお美/火野正平/南田洋子/中尾彬/北村和夫/石橋凌/小西博之/湯江健幸/近藤等則/薬師寺保栄/浜田晃/織本順吉/野口貴史/速水典子/キムラ緑子
音楽 大島ミチル
撮影 木村大作
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