★★★☆☆
あらすじ
ミュージシャンを目指す男のために、夜の店で働き始めた女。
感想
ほとんど活動もせず、くすぶっているミュージシャンを目指す彼氏のために、夜の店で働き始める臼田あさ美演じる主人公。彼氏の音楽活動の為だったら、どんなことでもして応援するつもりでいる。でもこれは、彼氏が好きなのではなく、彼氏のために頑張る自分が好き、という典型だ。
だからそんな男のために夜の店で働いたり、体を売ったりしてボロボロになればなるほど、本人は幸せを実感することになる。男がその頑張りに応えてくれないと腹が立ったりはするわけだが、こういう女性は世の中に結構いる。別に本人がそれで幸せならそれでいいし、男にとってもありがたい存在ではある。
ただそんな関係はいつまでも続かない。男の夢が必ずしも叶うわけでもないし、いつまでも女に期待を抱かせ続けることも難しいだろう。男は男で将来に不安を感じるし、女に申し訳ないと思う気持ちもある。そこで現実的に生きようとしたら、人と同じじゃないあなたが好きだったのに、と責められるなんて、男としてはちょっとたまらない。
主人公は、偶然再会した昔の男と会うようになる。この昔の男を演じるオダギリジョーのモテキャラぶりが、腹立たしさを覚えるほど自然だ。こういう事が出来る男というのは才能だよなと感心してしまった。昔の男は、モテキャラのらしさ全開で、主人公を振り回す。
結局主人公は、男のために一生懸命応援したり、振り回されたりするのが好きなのだろう。自分が自分ではなくなる瞬間を求めている。きっとそんな主人公に、多くの女性が共感するのだろうなという気がしている。二人の男が出くわすシーンで、笑いが止まらなくなっている主人公が印象的だった。
最後は、主人公なりにそんな状況を脱することができて、悲しみはあるが前向きになれる結末。ただ、自分のもとを巣立っていったな、尽くしたな、と気持ちよくなっていそうでもある。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 冨永昌敬
原作 南瓜とマヨネーズ (TOKYO NEWS BOOKS)
出演 臼田あさ美/太賀/浅香航大/若葉竜也/大友律/清水くるみ/岡田サリオ/光石研/オダギリジョー
音楽 やくしまるえつこ
撮影 月永雄太