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「喜劇 愛妻物語」 2020

喜劇 愛妻物語

★★★★☆

 

あらすじ

 セックスレスで悩む売れない脚本家の男は、妻と娘を連れて取材旅行に出かける。

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感想

 恐妻家の主人公が旅先で何とか妻に取り入ろうとする物語だ。だがこの妻がとにかく恐い。夫を邪険に扱い、ひたすら罵り続ける。主人公に収入がほぼ無く、妻が働き、家事・育児もやっているから立場が強いのは分かるのだが、いくらなんでも冷たすぎる。この妻役の水川あさみの演技がとてもリアルだった。

 

 だがそんな妻に対して、主人公が卑屈になっていないのがいい。何を言われてもめげないし、隙あらば反撃する。この二人のやり取りが笑えた。演じる濱田岳がいいキャラクターで、いいリアクションを見せている。

 

 

 つまりは、なんだかんだ言って二人の間に確固とした絆があるということだろう。それがよく分かる描写があったら、もっと安心して見れたかもしれない。まったく憧れはしないが、見る分には面白い関係だ。

 

 紆余曲折がありながらも、旅の途中でなんとか主人公の試みは成功し、当面の悩みは解消される。この時の二人のやり取りが可笑しい。特に妻の「楽すんな!」と言うツッコミには爆笑してしまった。

 

 そして映画はここで終わらない。その後にとんでもない愁嘆場が待っていた。今どき、いろんな思いが入り混じって感情が爆発し、本人たちが訳が分からない状態になってしまうシーンなんて珍しい。こんなシーンは戦争映画くらいでしかみることがないが、極限状態になればいつだってそうなってしまうのだろう。彼らの切実な思いが伝わって来て、心が揺さぶられた。

 

 なんとか危機を乗り越え、二人はハッピーエンドを迎える。だが、このあと二人はいつまでも幸せに末永く暮らしました、とは思えないようになっているのがまた良かった。彼らは大きな波を一つ乗り越えることができただけで、次の波を乗り越えられるかどうかは分からない。数年後にあっさりと破綻が訪れる可能性だってある。人生はそんなに簡単なものではなく、安心している暇なんてない。

 

 それから、こんな夫婦を間近で見て育つ娘には、かなりの悪影響だろうと思わなくもないが、それはまた別の話だ。

 

 人間の奇妙でおかしな生きものぶりが遺憾なく表現されていて、まさに人間喜劇といった趣の映画になっている。妻の態度がかなりキツいので、それが無理な人には無理かもしれないが、そうでない人は十分に楽しめるはずだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 足立紳

 

原作 喜劇 愛妻物語 (幻冬舎文庫)


出演 濱田岳/水川あさみ/新津ちせ/夏帆/光石研/ふせえり/大久保佳代子

 

喜劇 愛妻物語 - Wikipedia

 

 

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