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「空母いぶき」 2019

空母いぶき

★★☆☆☆

 

あらすじ

 謎の勢力により突如、日本の領土である島が占拠され、日本政府は空母いぶきを中心とした艦隊を現地に送り込む。

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 かわぐちかいじの同名漫画が原作、西島秀俊主演。134分。

 

感想

 日本が謎の勢力から攻撃を仕掛けられる物語だ。平和憲法の制約の下で国がどう動くのか、現実的に描かれていて色々と考えさせられる。

 

 状況がよく分からないままに占拠され、現地に駆け付けようとする艦隊が途上で攻撃されてしまう序盤は、なかなかの緊迫感だ。相手の意図が分からず、どう動いてくるのか分からないまま対峙し、突如の攻撃に対して素早く応戦しなければならない。どうなってしまうのかと目が離せない。

 

 

 そんな手に汗握る展開が続くのだが、中盤まで進むと猛烈に飽きてくる。同じような映像、同じようなセリフ、同じような劇伴音楽が繰り返され、集中力が奪われてしまった。変わりばえのしない戦局を追う気力も萎えた。

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 戦争なんてそんなもので、そうそう劇的なことは起こらない。だからリアルといえばリアルなのかもしれないが、物語としては面白くない。日本側にこれといった分かりやすい目的がなく、相手の攻撃にその都度対処するだけの受け身でしかないのも物語の推進力を落としている。

 

 戦闘の合間に挿入されるドラマも、リフレッシュできる類いのものではなく、暑苦しいだけだ。日本国民のために戦うとか、国家としての覚悟を示すとか、当たり前のことを熱く喋っているだけだ。普通はそんなの語る必要もないくらい当然のこととして、その上で軽口を言ったり、愉快なふりをしたりしているのに、と思ってしまった。

 

 これも戦争や軍隊に馴染みのない日本人にはちゃんとした説明が必要だからなのだろう。平和な証拠で良いことなのだろうが、物語としては面白くない。違うんだよ、これはアレだよ?と必死に言い訳しながら戦っているように見えてしまう。

 

 また、登場するのが理想的な総理、理想的な自衛隊、理想的なメディアだというのも嘘くさくて鼻白む。いちいち官僚に頼らないと何もできない総理や閣僚、まともに指揮できずにオロオロする自衛隊、忖度しまくりで政府広報と化すメディア、くらいじゃないとリアリティがない。これでは憲法の制約だけをリアルに描いてもしょうがないように思えてしまった。

 

 それから、中井貴一演じるコンビニ店長が、本編とは関係なさそうな形で登場する。きっと彼はスパイで、イヤホンで戦況を確認しており、軍隊の動きに呼応して内乱を起こそうとしているのだ!くらいに想像力をたくましくしていたのに、ただの庶民代表の役割だったのには脱力した。全体的に物語が真面目すぎる。

 

 もはや世界は戦争を止められないし、国連が来たって構わず攻撃される。最後に本田翼演じるジャーナリストがアップした渾身のメッセージ動画だって、ほとんど再生されることなく情報の海に沈んでいくはずだ。この映画公開後に現実に起きたことを考えると、すべてが古臭く感じてしまう物語だ。

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 「せかいはひとつ。みんな友だち。」ではなくて、友だちにはなれないような人たちともうまくやっていく、という考え方に切り替えないと、きっと戦争はなくならないのだろう。

 

スタッフ/キャスト

監督 若松節朗

 

脚本 伊藤和典/長谷川康夫

 

原作 空母いぶき(1) (ビッグコミックス)

 

出演 西島秀俊/佐々木蔵之介/本田翼/小倉久寛/髙嶋政宏/玉木宏/戸次重幸/市原隼人/堂珍嘉邦/片桐仁/和田正人/石田法嗣/平埜生成/土村芳/深川麻衣/山内圭哉/千葉哲也/金井勇太/加藤虎ノ介/三浦誠己/工藤俊作/横田栄司/岸博之/渡辺邦斗/遠藤雄弥/橋本一郎/俊藤光利/山田幸伸/綱島郷太郎/袴田吉彦/井上肇/藤田宗久//村上淳/吉田栄作/佐々木勝彦/中村育二/益岡徹/斉藤由貴/藤竜也

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音楽    岩代太郎

 

空母いぶき

空母いぶき

  • 西島秀俊
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空母いぶき - Wikipedia

 

 

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