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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「教養としての聖書」 2015

教養としての聖書 (光文社新書)

★★★★☆

 

内容

 聖書の中から六つの書をピックアップしてダイジェストで解説した本。著者が行った講座の内容をもとにして書籍化。

 

感想

 聖書がいくつかの書からなっているという事すら知らなかったので、めちゃくちゃ勉強になった。しかし、映画やテレビで見る宣教師が持っている聖書は一冊だが、あれはそのうちのどの書を持ってるのだ?と気になってしまった。それとも分厚いのですべての書がまとめられているという事なのか。

 

 本書を読んでいて一番意外だったのは、殺生や戦争を完全には否定していない事。宗教というものは、そういう事を完全否定するものだと思っていた。神は何度も怒り、様々な集団を滅ぼしたりしている。どうりで宗教がらみの戦争や殺戮が頻繁に世界で起きているわけだと腑に落ちた。

 

 

 とにかく何も考えずに俺の言うことを聞け、ちゃんと聞いたらおいしい思いをさせてやる、というのはまるでどこかの独裁政権や悪代官のようだな、というのがざっくりとした印象。しかも俺のために死ね、とまで言うのだから、大日本帝国ぽくもある。意外と日本人に向いているのかも、と思わなくもない。

 

 モーセは神に反論してます。抗議しています。神はえらいですけど、理屈があれば、何を言ってもいい。「神さま、なんでこうなんですか?」みたいな。これが一神教の考え方です。日本人は相手がえらいと、「ハハ―」みたいになっちゃって、論争できませんね。

 p73

 

 でもこういう部分を読むと、やっぱり向いてないかも、と思ったり。ただ宗教は人々の生活に大きな影響を与えているのだなという事を思い知らされる。無神論者のつもりの自分だって、気付かないうちに神道や仏教の影響を受けているはずだ。そういう意味でも、世界の様々な宗教を理解することは重要だなと感じた。

 

 私としては、この書の預言を聞く者すべてに警告する。もし、それに書き加える者があれば、神がその者に、この書に書き記されている災いを加える。もし、一部でも取り除く者があれば、命の木と聖なる都の取り前を取り除かれる。 

p327

 

 文書の改ざんも禁じているから、さらに日本人には向いていないのかとも思ったが、文書を残して保存、管理するというのは世界の常識なので関係ないか。でも、キリスト教の影響の強い国では、日本で起きた信じられないような文書改ざん事件と同様の事は起きないような気がした。改ざん自体に抵抗を感じるだろうし、命じる上司に皆が異議を唱えて抵抗するだろう。仏教や神道にはそんな教えがないのか気になった。

 

 旧約聖書を扱った前半は歴史物語を読んでいるようで楽しかったのだが、新約聖書の「ローマ人の手紙」は言ってること難解で、良く分からずつらかった。そして最後の「ヨハネの黙示録」はトンデモ過ぎて頭に入ってこなかった。ただ、天使や怪物や魔法などが出てくるファンタジー系の物語が好きな人は楽しんで読めるのかもしれない。

 

 全体を通して読むことで、モーゼの海を割る話やノアの箱舟など、今まで断片的に知っていた聖書のエピソードやワードが、パズルのピースのようにはめ込まれ、全体が見えてくる体験は楽しかった。大まかな全体像をつかむには良い本だ。

 

 それから、ヒッチコックの「鳥」は実は聖書からヒントを得ていたといった話も興味深かった。その他にも、これは小説のタイトルにあったなとか、映画で引用されていたなと気づくこともあって、そういうものをより深く楽しむためにも聖書の知識は必要だなと痛感した。ただ全部を読み通すのはしんどそうなので、つまみ食いをする感じで気になる部分を読んでいきたい。

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著者

橋爪大三郎 

 

教養としての聖書 (光文社新書)

教養としての聖書 (光文社新書)

 

 

 

登場する作品

これから読む聖書: 創世記

The Bible with Sources Revealed (English Edition)

十戒 (字幕版)

トマスによる福音書 (講談社学術文庫)(トマス福音書)」

原典 ユダの福音書(ユダの福音書)」

ナグ・ハマディ文書 I 救済神話 (岩波オンデマンドブックス)

サロメ (岩波文庫)

最後の晩餐の真実 (ヒストリカル・スタディーズ)

SCIENCE AND HEALTH WITH KEY TO THE SCRIPTURES (English Edition)(科学と健康)」

黙示録論 (ちくま学芸文庫)

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