★★★☆☆
あらすじ
互いの不倫が明らかになり、冷戦状態となった熟年夫婦。
感想
開業医の夫は若い女と浮気を繰り返していたくせに、妻が浮気をしているのではと疑念を抱いた途端に妻をネチネチと責め立て始める。自分の浮気がバレてると気づいても、開き直っているのか、その姿勢は崩れない。正直、なんでそんなに強気でいられるのか、良く分からなかった。その神経が信じられないというか。
だがこういう自分の事を棚に上げて、平気で相手を怒鳴り散らすおじさんは割と見かけるので、そこまで違和感はない。それに、これくらい厚顔無恥でないと、社会的地位を手に入れられないものなのかもしれない。
一方の妻は夫の浮気を知りながらも見て見ぬふりをしていた。泳がせていたと言ってもいいのかもしれないが、証拠もなく疑惑だけで取り乱す夫とは格の違いを感じてしまった。そしてそんな身勝手な夫の子供じみた追及がきっかけとなって自身も浮気をする。
しかし浮気をしようと思っても、そんな簡単にすぐにできるものではないので、これも前々からいつでもいける状態を作っていたという事だ。ここにもまた妻のしたたかさが見える。意図的ではないのかもしれないが、深層心理ではそういう準備をしていたという事だろう。
互いに相手の不倫を責め立てて、ついには冷戦状態に陥る二人。そんな中で、夫がさすがに身勝手すぎると思ったのか自身も浮気を控えたのはちょっと面白かった。何も間違っていないのだが、俺も浮気を止めたのだからお前もするなよ、とでも言いたげな様子がいかにも子供っぽい。
冷戦状態は、お互いが感情をぶつけ合ってしまったことにより引き起こされてしまった。結局、夫婦も会社なんかと同じように、腹の底は見せないで自分の役割に徹したほうが良いのかもしれない。互いに直接、不満をぶつけ合うのではなく、居酒屋で会社への不平を愚痴るように、外でストレスを解消するのも解決法のひとつなのだろう。
とはいえ、表面を取り繕えば裏で何をしても不問、ではいつか破綻するから、不倫はしてもいいけど大っぴらにせずに隠そうとすること、みたいな線引きは必要だろう。勿論、不倫はしてはならない、でもいいが、それは各夫婦が決めることで、外野がとやかく言うことではない。
元々この映画の中の夫婦は、まるでご主人様と家政婦みたいな関係で、今見るとかなり違和感を感じてしまう。もしかしたら今でもこんな夫婦がいるのかもしれないが、だとしても当人たちが納得しているのなら、これもまた外野がとやかく言うことではないのだろう。夫婦の形はそれぞれだ。
情緒たっぷりの濡れ場が登場する映画だが、最近はメインストリームの映画でこういうシーンはあまり見ない。どちらかというとドライというか、リアリティを重視したものが多いので、今あえて人気女優にこういう事をやらせるのも逆にありなのかもしれない。ヒットするかは知らないが。
スタッフ/キャスト
監督
原作 別れぬ理由
出演
三田佳子/古尾谷雅人/今陽子/平尾昌晃/丹古母鬼馬二
音楽 羽田健太郎
撮影 木村大作