★★★☆☆
あらすじ
スーパーのレジ係に恋をしたごみ収集車の運転手。アキ・カウリスマキ監督の労働者3部作の第一作目。フィンランド映画。80分。
感想
ごみ収集車の収集人として働く男が主人公だ。無口で黙々と働き、何を考えているのか分からないくらい淡々と日々を過ごしている。そんな男がスーパーのレジ係の女に恋をする。相変わらず無表情なのだが、それでもデートを前に彼なりに張り切り、いそいそと準備をする様子は可笑しかった。同僚にバレバレなのにすっとぼけたりもする。
だが彼なりに気合を入れたデートも、ズレたプランで彼女に愛想をつかされてしまう。その場で慌てたり落ち込んだりするのかと思いきや、粘ることなく潔くデートを終わらせさっさと帰っていってしまったのには驚いた。それでも色々あって彼女との縁は続き、結局は付き合い始めるのだが、主人公がここぞというタイミングで必ずあっさりと引き下がってしまうのがもどかしかった。彼女が完全に待っている時に行かないし、引き留めるべき時に引き留めない。
彼のそんな態度がとても不思議だったが、「俺にはいちいち理屈をこねる贅沢などない。」と語った言葉で、なんとなくその気持ちが分かったような気がした。彼はおそらく自分は高望みなどしてはいけない人間だと考えているのだろう。だから何かネガティブなことが起きても「そうだよね、分かってたよ」と何でもないような顔をして受け入れてしまう。最初から傷つかないように保険を掛けている。
そうは言っても彼にだって人並みに望みはある。だが普段は無理して抑えているのでそれが変なタイミングで表に出てきてしまう。それが彼を思春期の中学生じみた挙動にしてしまうのだろう。もう中学生ではない主人公が、そんなマインドのまま日々を過ごしていることになんともいえない悲哀を感じてしまう。
悲しみを感じるのは主人公に対してだけではない。彼女もまたイジけた少女のような振る舞いをする。あまり幸せな人生を送れていない二人と言えるだろう。そんな二人が出会い、自分の本当の気持ちに素直に向き合えるようになっていく。
あか抜けない世界のまったくキラキラしていないラブストーリーで、アキ・カウリスマキ監督の世界観が存分に表れている。どうしようもない辛気臭さがなんともいえない味となり、そこはかとないユーモアとペーソスを生んでいる。登場人物たちがほとんど表情を変えず多くを語らないところや、二人の顔が交互にアップになるところなどは小津映画の影響を感じた。
独特の雰囲気で悪くはなかったが、飄々とし過ぎている感もあり、もうちょっと何か欲しかったなと思ってしまうような物足りなさは残った。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 アキ・カウリスマキ
製作 ミカ・カウリスマキ
出演 マッティ・ペロンパー/カティ・オウティネン/エスコ・ニッカリ/ユッカ=ペッカ・パロ/マト・バルトネン/サッケ・ヤルベンパー
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